難易度の高い完封だ。ヤクルト先発の小川泰弘投手(26)が強い雨の中で広島を圧倒した。7回の打席にも立ち、深いイニングを目指すも、攻撃中に雨が強まり中断した。そのまま試合が終わり7回を被安打2、無失点で1点を守り抜いた。「集中を切らさず投げた。投げづらいかと思ったが、しっかり足を使えた」。ユニホームには両足のすね近くまでマウンドの赤土が染み込み、茶色に変わっていた。

 力感みなぎるフォームと直球で16勝を挙げ、ライアンの名前を売った4年前の姿があった。100球を超えてからストレートがさらに加速し、重厚感も増した。先制してもらった直後の7回。先頭エルドレッドを見逃し三振にした146キロ。「勝負どころ」に設定した2死二塁、新井に対して並べた144キロと145キロ。「開き直って、アウトローを選択した」。原点に立ち返り、勇ましく突破した。

 カブス上原とこなす恒例の自主トレ。スピン量を競うように並んで直球を投げ込み、黙々と走り込み、ウエートをこなす。互いに芯が太いからなれ合うことなく、独特の緊張感が充満する。「トレーニングの種目も、内容も変えた。今までは下半身の割に上半身が弱かったり。積極的に鍛えるようにした。『ここ』という時、真っすぐで押せる」と深めた自信は、悪条件の中で証明された。

 「いつも通り入ろうと心掛けた」と小川。試合前はかすむ外野でフォームを固め、イニング間も黙々と球筋を見定めた。培った技術を裏付けとした不動心が、雨中のカープ打線という難敵を制した。【宮下敬至】