「トム様」が史上初の代役2勝目を挙げた。楽天戸村健次投手(29)が、先発予定だった岸孝之投手(32)に代わって緊急登板。今季初マウンドとなったが、6回途中無失点と試合をつくり、敵地でのソフトバンク3連戦に勝ち越した。貯金は今季最多タイの9。緊急アクシデントを見事に乗り切り、首位をガッチリキープした。

 試合開始15分前。トレーナー室の扉がいきなり開いた。マッサージを受けていた戸村は、寝かけていた。目の前に立つ与田、森山両投手コーチから「戸村、いくぞ」と言われても、理解するまでに時間を要した。18日に今季初昇格し、ここまで登板機会「0」。出番は突然だった。急いでブルペンに向かい、30球程度で肩を作った。「岸さんに何かあったんだ」。昨年7月3日西武戦以来の1軍マウンドに向かった。

 午後1時開始のゲーム。予告先発は、岸だった。試合前の室内ブルペンで、異変が起きた。投球練習をしていた際に、腰の痛みを感じた。与田投手コーチは「本人は投げられると言っていたが、シーズンも始まったばかり。無理はさせられない」と判断。岸から「ごめん」と言われた戸村は「こういう不測の事態に対応するために1軍に来たと思っている」と覚悟を決めた。

 「相手のスタメンも確認していなかった」と言うほど、ドタバタしていた。それでも「自分に出来ることをやろうと、何も考えずに」とピンチにも動じなかった。初回2死から単打と四球で一、二塁としたが、デスパイネを低めカットボールで投ゴロ。2回2死一、三塁も、中村晃を低めフォークで二ゴロに片付けた。