楽天の5番銀次内野手(29)が、剛速球を打ち返すタイムリーを放った。5日の西武戦。5点を追う7回2死三塁から岩手の同郷、西武のエース左腕菊池雄星(25)の156キロの速球を、左前に鮮やかに流し打った。チームは1-7と完敗したが、打率3割3分3厘と好調の銀次が、今季初の完封負けを阻止して意地を見せた。

 銀次の巧みな打撃技術が、菊池の完封を打ち砕いた。0-5と試合がほぼ決していた7回。初めて三塁に走者を進めた場面に「あの打席は集中していた」と、1点を取ることに必死になった。1ボール1ストライクからの3球目。菊池の自己最速にあと1キロと迫る、真ん中低めの156キロの速球を左前に見事に流し打った。

 「球が速すぎて」と苦笑いしたが「力でいっても負けるので、しっかり(バットの)ヘッドを利かすイメージで立った。うまくバットが出た」と胸を張った。梨田監督が「振り遅れ気味。そう簡単にみんな打てない」と完全に脱帽した菊池の投球。銀次は2回の第1打席でスライダーを三直と、左方向へ球を捉える感覚を少なからずつかんでいた。

 チーム今季最少3安打の中で飛び出した“完封阻止打”。その貴重な一打で、楽天は開幕から25試合すべてに得点した。「完封で負けるよりはいいですから」と普代村出身の銀次は言う。菊池は盛岡市生まれと故郷は同じ岩手。年齢が離れているため高校時代の直接対決はないが、銀次が盛岡中央3年夏の05年岩手大会決勝では、菊池の母校・花巻東に敗れて甲子園を逃している。お互いにプロとなり、今シーズンは優勝争い真っただ中での対戦も十分にありうる。銀次対雄星の同郷対決が、東北の野球ファンを熱くする。【久野朗】