現代の巨人を背負うエースが、半世紀閉ざされていた歴史の扉をこじ開ける。菅野智之投手(27)が今日9日、52年ぶりの4連続完封という偉業をかけ、本拠地東京ドームで首位阪神を迎え撃つ。前日8日は川崎市のジャイアンツ球場で最終調整。歴史的マウンドへ上がる態勢を整えた。65年の4連続完封などで「エースのジョー」と呼ばれた元巨人の城之内邦雄氏(77)も、自身以来となる偉業達成を心待ちにした。

 菅野が、巨人V9の初年度に刻まれた大記録を超えていく。当時の多摩川ではなくジャイアンツ球場で、登板に向けた短距離ダッシュを繰り返した。「光栄なことです。城之内さんのお名前と記録は、もちろん知っていますよ」。周囲の偉業ムードは気に留めず、淡々と汗を流した。歴史的マウンドへ向かう考えが、頭の中で整理されていた。

 菅野 分業制などで今と昔は違うと言われていますが、最後まで投げ切る、マウンドを守るということは何も変わりませんよね。4連続がかかっていても、やることはいつもと同じ。最後まで投げ切るだけです。

 首位阪神との2・5ゲーム差を埋めることだけを意識した。相手は9点差からの逆転勝利など5連勝中。打線は3試合で打率2割8分4厘、26得点と好調を保っている。「勢いがあるし、日ごとのラッキーボーイがいる。カード頭を任されているので、自分が封じれば後のピッチャーが投げやすくなる」と警戒した。シーズンの流れを変えられる一戦。チームにとっての重要性を頭に刻み込んだ。

 目の前の一戦に集中する姿勢が先人に重なる。65年に4連続完封の城之内氏は「1球1球を勝負していった結果が完投になった」と回顧する。89年に11連続完投の中で3連続完封の巨人斎藤雅樹2軍監督(52)も「打者1人1人を確実に抑えることしか考えていなかった」と同様の考え方だった。菅野は「毎試合、どんな場面でも点を取られないようにということは同じです」と強調。丁寧なストライク1つ、アウト1つの積み重ねの先にこそ偉業はある。

 登板2日前、7日のジャイアンツ球場。斎藤2軍監督から「相手は9点を逆転したチーム。大変だぞ」とハッパを掛けられ「分かりました」と答えた。プロ4年間の集大成にと決意した5年目の今季。本拠地のマウンドで、52年間未到達の領域に挑む。【松本岳志】