一振りで試合を決めた。ヤクルト大松が12回にサヨナラ本塁打を放った。2-2の延長12回、代打で登場すると4球目のスライダーをヤクルトファンが待つ右翼席へ運んだ。試合を決める一打に「ホームベースにいく瞬間に泣きそうなくらいにうれしかったです」と目を潤ませた。

 昨年5月に右アキレスけんを断裂。オフにロッテを自由契約となりテスト入団を果たした。「もう1回野球がしたい」。苦しいリハビリに耐え、つかんだ打席だった。お立ち台で「正直、想像はできなかったですけど、いつかこういう日が来ると信じてリハビリを続けてきたので本当にうれしい」と振り返った。

 この日は妻敦子さん(34)が初めて球場で観戦した。大松は「何をするにしても車いすだったり、松葉づえで雨の日は外に出られなかった。そんなときにいろいろと支えてくれた」と感謝の思いを口にした。ヒーローインタビューの最後には「初めましてヤクルトスワローズの大松尚逸です」と声を張り上げた。苦難を味わった男が燕軍団の一員となった。【島根純】

 ▼ヤクルト大松がサヨナラ本塁打。大松のサヨナラ本塁打はロッテ時代の10年8月21日オリックス戦(千葉マリン)で11回に菊地原からソロを放って以来7年ぶり2本目で、代打では初めて。大松の本塁打は14年4月25日日本ハム戦以来3年ぶり。今季のヤクルトは4月2日DeNAで鵜久森が代打満塁サヨナラ本塁打を放っており、ヤクルトでシーズン2本の代打サヨナラ弾は66年福富邦夫、高山忠克、68年豊田泰光(2本)、77年若松勉(2本)に次いで4度目。