強烈なパンチ力で三塁線を抜いた。ソフトバンク柳田悠岐外野手(28)が、復興を目指す熊本で復活した。楽天戦で2点適時二塁打を含む今季初の猛打賞をマーク。チームを今季2度目の5連勝に導いた。前日12日には昨年4月の熊本地震で被害を受けた益城町の益城中央小学校を訪問。この日は満員のファンから元気をもらい、不振から脱出した。チームの貯金も今季最多の10。首位楽天とのゲーム差を1・5に縮めた。

 震災からの復興のために励ますつもりの柳田が、熊本から大きな力をもらった。満員の藤崎台球場。左中間の大きなクスノキ群が中堅を守る柳田を迎えた。「木がでかかった。すごいなと思って拝みましたね」。震災にも動じなかった樹齢1000年といわれる国の天然記念物に勇気づけられた。

 試合前にも、心が揺さぶられることがあった。選手会が招待した南阿蘇西小の児童20人と記念撮影。前日12日にサファテ、本多らと益城中央小を訪問した柳田は「すごい笑顔で元気で、逆にパワーをもらった。打てないくらいどうでもいいなと正直思った。逆にそれが良かったかも」。悲しいことや悩みごとも見せない子供たち。不振に悩んでいた気持ちが一気に晴れた。

 第1打席から積極的にバットを振った。初回、無死一、二塁で美馬の低めカーブを左翼線へライナーではじき返す先制の2点二塁打。42打席ぶりの打点が決勝打となった。3回に中前打、7回にも右前打を放ち、今季36試合目で初の猛打賞だ。「実力というより、本当に熊本の人のおかげです」。昨年7月の被災地訪問は予定が合わなかった。今回、初めて被災地の小学校へ向かう道は、まだデコボコ。倒壊したままの家屋も目にした。1年以上過ぎてもなかなか進まない現状に胸が痛んだ。それでも、児童たちが笑顔で迎えてくれたことがうれしかった。

 最後は1点差逃げ切りだったが、工藤監督は「勝つところを見せることができて良かった。柳田も3本打っていい兆しが見えてきたかな」と頬を緩めた。連勝を5に伸ばし、最近10試合は9勝1敗と無類の強さを発揮。貯金を今季初めて2桁に乗せた。柳田は「元気をもらえたので、シーズンの優勝という形で恩返ししたい」。ファンに力強く優勝を約束した。【石橋隆雄】