阪神メッセンジャーは最後までエースの役割を全うした。8回に勝ち越しを許してもなお1死満塁。ここからが真骨頂だった。中日工藤、藤井を真っすぐで連続三振。全くタイミングを合わさせなかった。「内容は良かった。5回にああいう形で点を取られたのが残念だった。長いイニングを投げても負けたら悔しい」。123球を投げ、8回2失点。12個の三振を奪い、通算奪三振数で井川慶を超えて球団歴代6位となったが、今季初黒星を喫した。

 直球と変化球のコンビネーションが良かった。序盤はカーブを決め球に三振を量産。中盤からはこの日、精度のあったフォークを武器に中日を苦しめた。内容は良かった。それだけに5回1死三塁、中日京田を投ゴロに打ち取りながら、高くはずむ間に同点の生還を許した悔しさが残った。

 勝てばチームの歴史に名を刻んでいた。開幕戦から5勝負けなし。3、4月の月間MVPに選出されるほど文句のない数字を残した。球団史上、開幕投手で無傷の6連勝を達成したのは51年の内山清のみ。勝てば66年ぶりの快挙だった。

 偉業こそ逃したが、開幕から好投を続ける安定感は際立っている。その裏に家族の存在があった。母の日だった14日は休養日。帰阪して朝食に妻ベネッサさんと子どもたちに手作りワッフルを振る舞った。妻は「とてもおいしかったわよ」とにっこり。どんな投球でも日頃から応援してくれる家族が力の源だ。

 チームでも家庭でも、頼れる大黒柱の助っ人は「自分のやってきたことを続けたい」。今季初めて土をつけられた。それでも躍動感ある投球を最後まで披露。これからもメッセスタイルを貫く。【山川智之】

 ▼メッセンジャーが12奪三振の力投で通算奪三振数を1182とし、井川慶の1174を抜いて阪神歴代6位に浮上した。