日本ハム杉谷拳士内野手(26)が、オリックス11回戦(札幌ドーム)で攻守に奮起し、勝利を呼び込んだ。1回の右中間三塁打を皮切りに、3打席連続出塁。5回に右前打からの二盗で決勝点の布石を打てば、8回には大飛球を好捕するファインプレーと守りでも魅せた。19日に再昇格後、3試合連続で先発し、5安打。だれからも愛される「イジられキャラ」が、3連勝、4位タイ浮上の立役者として堂々、光った。

 陰のヒーローは、間違いなく杉谷だった。1回1死の第1打席。オリックス山岡から放った打球は、やや前進気味だった相手外野陣の「期待」を裏切り、フェンス際まで伸びた。得点にはつながらなかったが「(三塁打で)1打席目からすんなり試合に入れたことが良かった」。3回2死からは投前セーフティーバンドで相手失策を誘い、右前打で出た5回には決勝点につながる二盗に成功。チームを勢いづけた2番打者は「あそこで(二盗)出来たのは、すごい良かった」とうなずいた。

 再昇格後3試合連続先発し、5安打。「機能しないと話にならないので…」と謙遜するが、打席でも、守備でも首脳陣の期待に応えている。前日までの2試合は二塁を守ったが、この日は右翼での先発。そんな中、8回には、この回先頭オリックス中島の右中間への大飛球を、背走一番、好捕した。

 「拳士、今日(試合に)出ていたんですね」。栗山監督は「(8回の)フライはスタートが遅れているので、しっかり走ってください」とファインプレーが“自作自演”だったかのようにコメントしたが、それこそがムードメーカーの証し。当人は「言われると思っていたので、目を合わせず帰ってきました」と笑いながら、切り返した。

 試合前には中田にテーピングで両目をふさがれ、マジックで両目を“上書き”される姿もあった。「イジられ役」で雰囲気を和ませた男は「いつものことなので…」。まさに、唯一無二の存在。チームの再浮上へ、元気印の盛り上げが欠かせない。【田中彩友美】

 ▼3回に先制した日本ハムが、追いつかれた直後の5回に勝ち越し、押し切った。今季イニング別得点は3回が最多で、48安打9本塁打を集中し、全156点中19・2%の30得点。次ぐのが、この日追加点を奪った5回で23得点となっている。逆に、失点は3、8回が26失点で最も多い。ちなみに、リーグ優勝した昨年は初回が最多98得点で、全得点の15・9%を占めていた。