阪神金本知憲監督(49)が、ベンチのイスを蹴り上げて悔しがった。両軍無得点の5回、先頭打者の福留が三塁打。是が非でも先制したい場面で右飛に倒れた次打者、中谷将大外野手(24)について「(ケース打撃が)できない。僕らの指導力不足ですね」と話した。勝負所で1点を奪えなかったことが響いて、試合は終盤暗転。8回から投入した桑原謙太朗投手(31)が、代打亀井に決勝打を浴び、今季初黒星を喫した。

 一塁ベンチで、金本監督が鬼の形相になった。次の瞬間、何かを蹴り上げているかのように見えた。怒った。波乱の5回だ。先頭の福留が激走の三塁打で突破口を切り開いた。中谷の浅い右飛の後、鳥谷が頭部死球で病院に直行。続く代打伊藤隼は投ゴロに倒れる。ここで指揮官はたまった怒りをはき出した。

 「その前でしょう。中谷のところでしょう。あれだけ言っても、(ケース打撃が)できない。僕らの指導力不足ですね」

 矛先は5番で起用した中谷に向かった。内野は前進守備ではなく、下がり気味のポジショニングだった。ゴロを転がせば1点入る可能性は高かった。その状況で、浅い外野フライ。三塁走者の福留は生還できず、最も中途半端な結果に終わった。キャンプから勝ちにこだわり、1点にこだわる野球を目指した。しかし勝負どころで実らず、自らの指導力不足とまで言い切った。

 5回表まで、両軍ノーヒットの投手戦だった。先に1点を取ったチームに道が開ける。指揮官はそう確信していた。5回に中谷が凡退した後、1死一、三塁、ここで金本監督は動いた。北條に代打伊藤隼のカードを切る。「今日は1点勝負だと思ったので、右のサイドで今の北條はキツい。勝負にいきましたけど…」。少ないチャンスを生かせず無得点に終わる。これが終盤の暗転につながった。

 7回2安打無失点の能見から、桑原にスイッチ。勝ちパターンの継投をしかけたが、右腕は4月4日ヤクルト戦以来の失点で今季初黒星。9回には、藤川が2失点し、継投は裏目に出た。「(能見は)なかなか勝ちがつかない。ベテランが踏ん張っている中で、野手が点を取ってやらないと。1点取れば、向こうの出てくるピッチャーもかわってくるし、違った流れになった。5回がすべてでしょう。しっかり反省して、取り返してあげないと。今後、能見に勝ちをつけられるように」。重苦しい雰囲気を打破すべく、野手に反骨心を求めた。今季初の2カード連続負け越しで、2位広島に0・5ゲーム差で肉薄された。快進撃の金本阪神が交流戦を目前に、思わぬ正念場を迎えた。【田口真一郎】