トップとしては伝えたい実情だったのかもしれない。ファンあってのプロ野球。人気回復も大きな使命だろう。だが活路を求めて戦っている現場が試合へと飛び出す直前に聞いても、魂は揺さぶられない。私はタイミングの外れた訓示を、疑問に思う。

 11連敗を喫した前日の試合後は報道陣の前で「ファンに申し訳ない」と話した。トップとして、その言葉で十分なのではないか。視聴率やチケット売り上げの現状などチームに伝えなくても、チームは球場に足を運ぶファンの嘆きと不満を一身に受けている。

 名門の歴代オーナーは力や発信力を備える。元オーナーの渡辺恒雄・現読売新聞グループ本社代表取締役主筆を含め、公の場で強いメッセージを発してきた。だが試合前の聖域ともいえる時間に割って入ってきたのは聞いたことがない。

 迷走は続いている。打てる手段も限られてきた。士気の高揚は残された数少ない武器だ。永遠に負け続けることは現実的にはない。だが1勝しても今、起きている事象を見過ごしては何も変わらない。互いを尊重し、一体となって戦わなければ巨人軍に未来はない。【広重竜太郎】