高橋監督もチームメートもびっくりの、平成の“リアルお祭り男”弾だ。「マイナビオールスターゲーム2017」で、今シーズン本塁打0の巨人小林誠司捕手(28)が、3回2死から左翼席に先制ソロを放った。オールスター初出場、初打席、初スイングで初本塁打。今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンド中国戦以来の1発で、巻き返しを狙う後半戦に弾みをつけた。

 一番喜んでほしい人が、ベンチで突っ伏していた。今シーズン本塁打0の小林が、3回2死からの初球、オリックス金子の真ん中に入った144キロの直球をフルスイング。オールスター初出場、初打席、初スイングでの先制ソロに「ちょっと信じられないです。自分でもびっくりしてます」と興奮した。

 4カ月以上遠ざかった感触に、ガッツポーズを決めて一塁に走りだす。大喜びの全セチームの中で、高橋監督だけは1人ベンチでうなだれ、手すりに頭をこすりつけた。なぜ今なんだと言わんばかりに両手を広げる“WHY”ポーズ。「年に1本出るか出ないかだから。プロ野球選手なんだから力はあるよ」と、クールな指揮官が、ベンチに戻った愛弟子の頭を思わず右手でひっぱたいた。テレビ解説中だった巨人坂本勇は「びっくりしました。シーズンで打ってほしいです」と笑って言った。

 それほど希少価値が高い1発だった。小林の本塁打はWBCの1次ラウンド、3月10日の中国戦以来。WBCでは打率4割5分、6打点と大活躍し、課題の打撃を克服して大ブレークした、かに見えたが、シーズンに入ると、ここまで打率1割9分と苦しんできた。過去球界をにぎわしたお祭り男といえば、シーズンで打って、オールスターでも打つ豪傑が多かったが、小林はWBC、オールスターで打つ“リアルお祭り男”なのか。高橋監督は「それじゃオレに得はないよ」とピシャリと言った。

 打席に入る直前には、WBCをともに戦った松田や嶋から「バットを短く持たずに思い切り振れ」とジェスチャーでアドバイスを送られた。大活躍した国際舞台を思い起こすような、振り切った1発。「シーズンで全然打ててないので、シーズンでも打てるようにしたい」。第1戦終了直後には、どこまで本気なのか「明日MVPを取ります」と謎の宣言を決めて球場を去った“リアルお祭り男”からの脱却へ、今度こそは、と言える後半戦にしていきたい。【前田祐輔】

 ▼球宴初出場の小林が初打席で本塁打。球宴の初打席本塁打は16年<1>戦栗山(西武)以来17人目で、巨人選手は初めて。4年目の小林はプロ通算本塁打が8本しかなく、今年の前半戦は本塁打を打っていない。前半戦本塁打0の選手が球宴で1発は、小林同様に初打席で打った98年<2>戦大村(近鉄)以来、19年ぶり。セ・リーグでは71年<1>戦江夏(阪神)以来だ。前半戦本塁打0で球宴初打席本塁打は、60年<3>戦巽(国鉄)前記大村に次いで3人目。