一方で、会沢の心の大半を占めるのは「優しさ」だ。この日は胃がんからの復帰を目指す赤松の35歳の誕生日。外野から戻ってきたウイニングボールを右ポケットにしまった。「赤松さんに渡します。僕らが頑張っている姿で勇気づけられれば。僕らは仲間。一緒に戦っている」と照れくさそうに明かした。選手会副会長としてチームをまとめる役割も背負っている。歓喜の輪が大きく、祝福が激しかったのは、必然だろう。

 まさに球場全体に報いた一打。チームは3点を追う8回に4安打を集中させて3得点。一気に同点に追いついた。中継ぎ投手が踏ん張り、ベンチ入りの野手は石原以外を使い切る死闘だった。緒方監督は「本当にすごい試合」と目を丸くし「執念、気持ちで追いついて、2日続けてサヨナラ勝利。選手の頑張りは大したもの」と評価した。優勝へのマジックは一気に10に減った。風は広島に吹いている。【池本泰尚】