高木ボール! 西武菊池雄星投手(26)が開幕前ラスト登板を5回2安打無失点で終えた。DeNA戦に先発。最速154キロの直球に、スライダー、カーブ、さらに新球ツーシームを織り交ぜ、得点を許さなかった。寝違いのため1イニングで降板した前回(14日・中日戦)の不安を感じさせなかった。3年連続となる開幕投手へ、準備を整えた。

  エースに新たな武器が加わった。その名も「高木ボール」。DeNA打線を5回2安打無失点に抑えた菊池は「今日はフォークは1球も投げてません。ツーシーム、あ、高木ボールを試しました」と、わざわざ言い換え、いたずらっぽく笑った。高木ボールとは、ツーシームのことだった。

 3回先頭。左打ちの倉本に対し、カウント0-1から投じた。内に食い込ませ、芯を外した一ゴロに仕留めた。4回には「特別なバッター。気持ちが入る」という筒香にも、カウント0-1から投げた。内に外れたが、強打者にも積極的に試した。計10球足らず。「ちょっとコースを外れたけど、それを含めて有効になる」と手応えを得た。

 それにしても、なぜ「高木ボール」なのか。前日の練習後にさかのぼる。マッサージを受けていると、巨人から加入した高木勇と一緒になった。そこでツーシームの握りを教わり、「ストレートの感覚で投げたら落ちる」と助言された。この日の試合前ブルペンで試し、早速、使った。

 ツーシーム自体は今春キャンプでも習得を試みたが、最終的には去年も投げているフォークの精度向上を選択。前回までのオープン戦で積極的に試した。だが、130キロ台後半の落ち球に悩みが残った。相棒の炭谷や首脳陣から「あのフォークの落ち幅なら球速を上げた方がいい」と注文を受けた。「球速も、落ち幅も上がらない。それなら、球速を上げて少しだけ変化するツーシームの方が投げやすい」と決断。フォークも引き続き取り組むが、高木ボールが宝刀スライダーに続く武器となれば心強い。

 開幕1週間前でも新球を試した。意図を聞かれ「1年通して、どれだけやるかなので。開幕も当然100%だけど、シーズン中に(新しいことを)試すこともあります」と答えた。次は、本番だ。「みんなで喜べる1年に」するために、先陣を切る。【古川真弥】

 ◆高木ボール 高木勇が巨人でルーキーだった15年の春季キャンプ。フリー打撃で投じた変化球が、スライダーとカットの中間のような独特の軌道だった。原監督が「高木ボール」と命名。これが元祖なら、菊池のツーシームは「2代目・高木ボール」か!?