開幕から唯一無二の場所を離さない。巨人吉川尚輝内野手(23)が「2番二塁」で先発出場し、同点2ランを含む4打数3安打2打点1盗塁と大暴れした。3月中旬は12打席無安打と打撃不振に陥ったが、日々の練習で復調。正二塁手としての開幕スタメンを当確させた。走攻守そろった16年ドラフト1位が、近年は2番打者と正二塁手を固定できずに苦しんだ巨人をけん引する。

 遮二無二くらいついた。6回2死一塁。楽天美馬に2球で追い込まれると、吉川尚の目の色が変わった。内角球は両腕を体に巻き付け、外角球は両腕を目いっぱい伸ばしてバットに当てる。ファウルのつばぜり合いからの9球目。内角高めに抜けた129キロスライダーを逃さなかった。根比べに勝ち「1打席1打席集中して、たまたまこういう結果になった」と右翼席中段へ同点2ランをぶち込んだ。

 二の足を踏みそうになった。2月からの好調が一転、14日のソフトバンク戦から12打席連続無安打と不振に陥った。フォームが崩れていた。「2月の頃のに戻そうとしてます」と毎日映像を見て復習するも、結果が出ない。花粉症も相まって眠りも浅い。心身の二重苦に思わず「ファーム落ちや…」とつぶやいた。

 二人三脚で改善した。20日の日本ハム戦前、吉村打撃総合コーチから指導を受けた。かかと重心となり、投手方向へ力が伝わりづらくなっていた。つま先重心を意識するように助言を受け、よりボールへ力を伝えるきっかけをつかむと、いきなり本塁打。「打てる日も打てない日もある。何が悪かったか踏まえて練習から準備する」と、20日以降は14打数8安打2本塁打と打率5割を超えた。

 唯一無二の存在となる。2番打者と二塁手は近年の巨人が固定できなかった場所。先発100試合出場以上の2番打者は07年谷、二塁手は14年片岡以来いない。07、14年は優勝しており、吉川尚はV奪還へのキーマンと言っていい。「まだ2番打者として仕事できていない部分が多い」と話すが、高橋監督は「可能性はある」と期待を寄せる。

 開幕へ、オープン戦はあと1試合。ここまで4盗塁と走攻守で結果を残し「1日1日を大事にやっていきたい」と自信も深まった。揺るぎない「2番二塁」の座。もう二転三転はさせない。【島根純】

 ◆吉川尚輝(よしかわ・なおき)1995年(平7)2月8日生まれ、岐阜県出身。中京では1年夏からレギュラーも甲子園出場なし。中京学院大では岐阜リーグで首位打者2回、盗塁王3回、ベストナイン4回。4年春はリーグMVPで大学日本一に貢献、大学日本代表にも選ばれた。17年のルーキーイヤーは出場5試合で11打数3安打。50メートル走5秒7。177センチ、79キロ。右投げ左打ち。