中日松坂大輔投手(37)が闘魂の力投&快打だ。投げては6回3安打1失点と阪神打線をねじ伏せ、打っては日本球界で12年ぶりの安打を放つなどプロ初のマルチ安打。13日巨人戦の前回登板は、右ふくらはぎの張りのため3回途中で降板。移籍後初の中6日の登板で先頭打者に揺さぶりをかけられたが、動じなかった。2勝目を挙げて4位浮上に導き、次回の登板は交流戦の開幕カード第3戦となる31日オリックス戦(ナゴヤドーム)が有力だ。

 松坂のハートに火が付いた。1回。先頭の阪神植田が初球でセーフティーバントを仕掛けてきた。1週間前の巨人戦で3回途中で右ふくらはぎに強い張りを訴えて降板。その回復具合を確かめようとするかのような揺さぶりに「イラッとしましたね」。マウンドから素早く駆け下りて投ゴロに仕留めた。その直後にマウンド後方で足を伸ばし、状態を確認すると、闘志を胸に劇場が幕を開けた。

 テンポ良くアウトを重ね、5回まで1安打だけ。6回に1点を失った後、ピンチは続いたが、3番福留をツーシームで見逃し三振。4番ロサリオはカットボールで遊ゴロに仕留めた。「状態は良くなかったがカットボールが良かった。唯一信用できる球。それがゲームを作ってくれた」。最速は142キロ。直球で押せずとも、カットボールを軸に6回3安打7奪三振で1失点。ふくらはぎにテーピングをして、服用するサプリメントを替え、水分の取り方にも気を使って臨んだ一戦で躍動した。

 バットにも気迫が乗ったのか、阪神先発の才木から快打を連発した。甲子園で春夏連覇した98年に生まれた右腕から4回に左安打。06年6月9日阪神戦(甲子園)以来となる安打をマークすると、5回にも左安打。プロ初のマルチ安打とする一打で、追加点の好機を広げた。本拠地での試合前練習が終わると、室内打撃練習場で打ち続けてきた37歳は「監督からも、バッティングを期待されて取ってもらったので」。お立ち台で口も滑らかだった。

 マウンドで観客をうならせ、打席で驚かせた松坂は最後に自ら次戦の先発まで予告した。「再来週、ナゴヤドームで投げると思うので、よろしくお願いします」。中6日のローテ入りを先延ばしして、今日21日に出場選手登録を抹消されるとみられる。最短での再登録が可能となる31日オリックス戦(ナゴヤドーム)に向かうようだ。思わぬ展開? に森監督も言った。「(登板日は)勝手に決めているみたいだけど、それに従うしかないな。彼をどう若手たちが見るか期待している」。中日は、松坂が巻き起こした上昇気流に乗っていきたいところだ。【伊東大介】