強がりじゃなかった。「ノーバウンドでいけますよ!」。楽天銀次内野手(31)は、「二塁送球はワンバウンドでいいから」と気遣う首脳陣に明るく返した。

捕手入団も、09年秋に内野手に転向。捕手として1軍でプレーしたのは、09年3月1日のロッテとのオープン戦だけ。1軍公式戦初マスクでも、9回にオリックス西浦の二盗をノーバウンド送球で阻止した。「ランナーが走ったから、ただ投げた」。チームとして、今季初の盗塁阻止。平石監督は「『最初が銀次か…』って、担当コーチが頭抱えてましたよ」と笑った。

腹をくくっていた。3点を追う9回、途中出場の捕手足立に代打藤田が送られた。1軍登録の捕手はスタメンの嶋と足立のみ。「自分しかいないでしょ」。3月中旬、平石監督の指示で1度だけブルペンに入り、石橋のボールを受けて有事に備えていた。代打が出た時点で、裏の登板に向け準備する松井にも「追いついたら、銀次と組んでもらう」と伝えられた。藤田の安打から驚異の粘りで追いついたが、投球練習中は借りたミットが合わず、1度戻って足立のミットを慌てて持っていくひと幕も。「ただ、必死でした」。ベンチからの配球指示に従い、松井、ハーマン、森原を巧みに“リード”。4イニングをわずか1安打に封じ、捕球ミスは1球だけだった。

5連勝から一転、3連敗の危機を救った主将は「引き分けに持ち込めたのが一番大きい。(第3捕手として)いい投手の球を受けられたのは自信になる」。投手の宋家豪を除くベンチ入りメンバーを使い切った総力戦が、ひと味違う楽天を予感させる。【亀山泰宏】