ソフトバンクが141試合目で力尽き、2年連続でリーグ優勝を逃した。工藤公康監督(56)は、中4日でエース千賀を登板させ、勝ちパターンもつぎ込み、野手16人全員を使い切る総力戦で粘ったが、勝利には届かなかった。気持ちを切り替えクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がり、2年連続の下克上で3年連続日本一を狙う。

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最後まであきらめなかった。3点差で迎えた9回、楽天の抑え松井を攻め1点をかえし、9番高谷の代打明石が中前打で2死満塁。だが、牧原が中飛で終わった。牧原はバットをたたきつけて悔しがった。ベンチの野手16人を使い切り、同点、逆転なら牧原が捕手をする予定だった。工藤監督は「負けたことは悔しいが、最後までみんなで何とかという粘りの気持ちが出ていた。何とか勝たせてあげたかった」と言葉を絞り出した。

中4日でエース千賀を投入したが、1点リードの6回、ウィーラーに逆転19号2ランを浴びた。千賀は「うまく打たれた。最後の最後に1球甘い球がいってしまった」と悔やんだ。本塁打の2球前にはトンボが千賀の近くに飛んできてビックリする場面もあった。

12日に131試合目でマジック12を点灯させたが、15日に西武に首位を奪われた。直接対決のない極限の戦いで、この日は今季最多タイの3失策。6回先頭ブラッシュのゴロを失策した遊撃今宮は「ミスをした方が負ける。あれでウィーラーの2ランにつながった」と悔やんだ。

今季は故障者に泣かされ続けた。左膝裏肉離れで長期離脱した柳田は試合後「シーズン通してなにもしていないので申し訳ない」と唇をかんだ。8月21日に起爆剤として復帰したが、その後もチームは先発のコマがそろわないなどで13勝14敗と波には乗れなかった。

2位とは最大7ゲーム差、西武とは8・5ゲーム差を逆転されてのV逸。今季開幕前に孫オーナーから厳命されていたリーグ優勝奪回はできなかった。

浅村、西のFA補強に失敗し、今季の新戦力はドラフトと育成からの昇格のみ。途中入団は19歳のスチュワートだけの中、故障者に悩まされ続けても優勝を最後まで争った。工藤監督は「CSファーストステージまでにコンディションを整え、日本一を目指して最後の最後まで戦いたい」と気持ちを切り替えた。2年連続の下克上へ、まだ戦いは終わっていない。【石橋隆雄】