広島の日本人最年長投手、中村恭平(30)は新年に、新人のような目標を掲げた。10年目シーズンに向けて「初の開幕1軍をまず目指したい」と照れくさそうに笑った。意外にもプロ9年間で開幕1軍入りは1度もない。最も近づいた1年目の11年は春季キャンプを完走し、オープン戦まで1軍に同行。開幕ローテーション入り目前だったが、東日本大震災の影響で開幕が遅れて、無観客での練習試合期間中に2軍降格となった。

その1年目もわずか3試合の登板に終わり、2年目以降も開幕1軍入りはならなかった。背番号が22から64に変わった17年からは春季キャンプも2軍で迎えるようになった。「ここ数年はシーズン終盤になると、クビになるかもしれないと覚悟していました」。不退転の覚悟で臨んだ19年、左腕が覚醒のときを迎えた。4月12日に1軍に昇格すると、第2先発のようなロングリリーバーとして力投を続け、セットアッパーまで上り詰めた。キャリアハイの43試合に登板して、防御率2・64。被打率1割9分6厘、奪三振率11・77の数字をたたき出した。

今年は球団最年長というだけでなく、セットアッパーも期待される。新球フォーク習得のため、オフも投げ続けている。「立場は変わっても、僕は変わらない。キャンプ初日から打撃投手をやれと言われればやる」。崖っぷちからはい上がった昨年のように調整は早い。新球を携えて、遅咲き左腕が初の開幕1軍を目指す。【前原淳】