ヤクルト上田剛史外野手(31)が17日、下半身のコンディション不良のため出場選手登録を抹消された。16日のDeNA戦の勝利と引き換えになった名誉の負傷。「上田新喜劇」と呼ばれるカメラ芸もしばらく見られない。ムードメーカーの離脱したチームは、厳しい戦いの日々が続く。

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神宮のグラウンドには、前夜の勝利をつかんだ魂が残っていた。約1カ月ぶりの連勝と、9カードぶりの勝ち越しを引き寄せたのは、ヤクルト上田剛史外野手(31)だ。代名詞の「上田新喜劇」は、ベンチの端で中継カメラに向けて行われる“ファンサービス”。カメラ目線でおどけた表情や、アフロをかぶり、生還したチームメートを出迎える様子はwithコロナ時代の新たなファンサービスとして、パ・リーグまで波及した。

登場曲に、クリスタルキングのヒット曲で、ヤクルトファンには言わずと知れた高津監督のカラオケの十八番「大都会」を使うなど、チームのムードメーカー。高津監督も「問題児だなぁ」と笑いながら、うれしそうだった。「彼なりに役割を理解して、もちろん守備、足以外のベンチにいる時も、気の利いた声も出す。みんなが気分良くグラウンドに立てる雰囲気をつくるのは、彼が一番かな」。守備固め、代走だけではない大きな役割を果たす。

チームとファンへ勝利を届けるため、必死のプレーだった。6連敗で迎えた16日のDeNA戦(神宮)。3-2の9回2死、左邪飛をネットに激突しながら捕球し、ゲームセット。歓喜に包まれた神宮で、右足を押さえて倒れ込んだ。外野手だけでなく、守護神石山もベンチから高津監督も駆けつけた。宮出ヘッドコーチにおんぶされながら勝利のハイタッチを交わす珍しい光景に、選手もファンも笑顔に。本当は痛みをこらえながら、重傷かもしれないという不安と闘いながらの姿だったはずだが、みんなに心配をかけまいとする心遣いに見えた。

17日、右足首を痛め出場選手登録を抹消。勝利のための大きな代償となってしまった。しかしプレーは、心に刻まれた。代打で3号ソロを放った中山は「執念があって、先輩のああいう姿を見せてくれて、僕ら若手も見習って頑張りたいと思った」と明かした。高津監督は「彼にとっても、我々チームにとっても痛い。昨日、最後の1個を取ったのは大きな1アウトだった。早く戻ってくることを願っています」。ファンも、チームメートも、みんな上田の笑顔を待っている。【保坂恭子】