マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(47)が高校野球に熱血メッセージを送った。26日、神戸市内で、日本新聞協会主催で加盟社向けの第73回新聞大会で講演。野球愛あふれ、球児への直接指導に意欲を見せた。19年12月にプロ野球経験者が高校、大学の学生を指導するための学生野球資格回復研修を受け、今年2月に資格回復。引退後もトレーニングを続け「球が速くなった」と仰天告白だ。一緒に走って投げる。新しいビジョンを明かした。

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イチロー氏は、やはりいまも「イチロー」だった。あのシルエットはまったく変わっていなかった。背筋をピンと伸ばし、日本では今年初めて、公の場で胸中を語った。野球への思いがあふれる64分間だった。とりわけ、声をはずませたのは、高校野球の話題だ。

「最近、高校野球をよく見るんです。『野球』をやっているんですよ。メジャーリーグは、いま、コンテストをやっている。どこまで飛ばせるか。『野球』とは言えない。どうやって点を取るか。高校野球には、それが詰まっている。面白い。頭を使いますから」

大リーグ通算3089安打。数々の金字塔を打ち立て、昨年3月に現役引退した。今年2月にはプロ野球経験者が高校、大学の学生を指導するための学生野球資格回復が認められた。その胸中を「いま、厳しい時代。ファンは『野球』を見たがっている。コンテストを見たいわけじゃない。そういう意味でも、高校野球はめちゃくちゃ面白い。だからプロに入る前段階の選手たちの野球にすごく興味がある」と明かした。

かつて神戸で高校野球の秋季大会を観戦した。その縁で昨年12月に智弁和歌山の教職員チームと草野球で対戦した。引退後もトレーニングを継続。今年8月には人もまばらな深夜に皇居を走った。この日も「47になったんですけど、面白いことに球が速くなっちゃったんです」と驚かせた。

「なぜ、こうやって続けているか。僕はいま、動ける。一緒にできてナンボ。だから彼らと一緒に走ったり、投げたり」。老齢になっても球児と白球を追うビジョンがある。「(近々、指導する姿を)見られると思います。まず(選手を)見たい。だから、1日参加はない。何日か見ていたい」と熱っぽい。「引退は選手としての死の形ではあるけど野球人としてはこれから。野球人として、何かお返しできたらなと思っています」。プロ人生のスタートを切った神戸で、新たな夢を語った。【酒井俊作】