<さよならプロ野球>

 2014年も多くの選手が球界の第一線を退いた。「さよならプロ野球」で新たな人生を歩み出した元選手を紹介する。

 兄の背中を追って飛び込んだプロ野球人生は5年で幕を下ろした。広島09年育成ドラフト1位で入団した永川光浩(27)だが、支配下選手登録されることなく、14年オフに戦力外を通告された。兄は球団最多セーブ記録を持ち、入団当時は絶対的な守護神だった永川勝浩(34)。現役5年間、「永川の弟」という重圧が常につきまとった。12年は独立リーグの四国IL・徳島、13年は同・香川に派遣され、実戦を積み重ねたものの、ユニホームを脱ぐことになった。

 プロでも、兄は兄であり続けた。ことあるごとにアドバイスをくれ、グラウンドを離れれば兄弟に戻っていた。「あれだけの結果を残しているだけでなく、野球に取り組む姿勢は、ひとりの野球人として参考にしていた。本当に尊敬しています」。小さい頃から憧れていた兄の背中は、プロ野球の世界でさらに大きく感じた。

 1月からは地元広島県の物流業社に就職することが決まっている。第2の人生も兄に導かれた。戦力外となり、行き先が決まらなかった永川光に手を差し伸べてくれた。知人を介して、物流業の株式会社ロジコムを紹介された。昨年12月20日から広島市内で1人暮らしを始め、1月からはマツダ車の部品管理から倉庫の管理などの業務を行う。「野球のことしか知らないので、今は不安ばかりです」。ドラフト指名されたとき以上の不安が募る。ただ、兄と異なる世界に身を置く第2の人生の成功が、兄への恩返しとなる。【前原淳】

 ◆永川光浩(ながかわ・みつひろ)1987年(昭62)11月2日、広島県三次市生まれ。三次-龍谷大。潜在能力を買われ、09年育成ドラフト1位で入団。12年、13年は経験を積むため四国ILに派遣された。今季ウエスタン・リーグは3試合登板のみ。189センチ、78キロ。左投げ左打ち。