訴訟問題に発展する可能性もあるフリーエージェント(FA)問題の下交渉が決裂した。労組日本プロ野球選手会の宮本慎也会長(37=ヤクルト)が11日、都内でNPB(日本プロ野球組織)の選手関係委員長を務める巨人清武英利球団代表と下交渉に臨んでいたことが分かった。16日の本会議に向けて意見交換をしたもの。清武代表はNPBの現状案として国内に限りFA取得までの期間を8年に短縮し(現在は国内外とも9年)、移籍に伴う補償制度の見直しなどを示した。だが、宮本会長は、これを拒否した。

 宮本会長は「コソコソ隠す必要はない」と下交渉の事実を認め「今回で完全に交渉が決裂したとは思いませんが、提示された案では到底受け入れられません」と語った。選手会は国内外とも7年への短縮を求めている。ただ、その他の諸条件が満たされれば「国内に限り7年」など条件付きの短縮に応じる可能性もある。どのような形であっても「7年」という数字が具体化されなければ合意には至らない見込みだ。

 一方のNPB側は、いつもながら各球団の意見が一致していない。ドラフト制度と関連させ「今後、希望球団に入れなかった選手は7年にする」という案も出ている。希望通りに入団した選手、現役選手は8年と取得年数が分かれる。現役選手に直接の恩恵はないが、諸条件を満たすことでカバーできる。これならば選手会にも検討の余地が出てくるが、これもパ・リーグ球団を中心に反対の声が出ており、提示できない。

 また年数以外の諸条件でも交渉の余地がある。補償金の減額率、また年俸の調停委員会のメンバー構成も検討課題になっている。清武代表は「まだまだ双方とも歩み寄らなければならない部分がたくさんある。代表者会議に持ち帰り検討したい」と厳しい表情で語った。選手会は最終的に訴訟に踏み切る覚悟も固めている。16日の会議で合意への道筋が見えなければ、訴訟への動きは加速していく。