<中日5-3広島>◇29日◇ナゴヤドーム

 中日森野将彦外野手(29)が完全復活を遂げる今季1号ソロと、貴重な中押しタイムリーを放って、2年連続の日本一を目指すチームの08年初勝利に貢献した。森野は今年2月のキャンプ中に左手第3中手骨を骨折し、ほぼぶっつけ状態で28日の開幕戦に出場していた。遅れてきた男の一発と、主砲タイロン・ウッズ内野手(38)の1号などで5ー3で広島に勝利。セ・リーグの覇権奪回への第一歩を飾った。

 迷いも不安もなかった。3回、森野は真ん中高めのストレートを思い切りたたいた。「完ぺきでしたよ。あそこは好きなところですから」。打球は右翼スタンドに飛び込む1号ソロ。それまで無安打に抑えられていた広島先発ルイスから先制弾。左手第3中手骨を骨折し、オープン戦にわずか3試合しか出場していない男の復活弾だった。

 この1発でオレ竜打線が目覚めた。谷繁、荒木の二塁打で2点目。さらに3番李も2試合連続安打となる中前適時打で3-0とした。前日の開幕戦は先発川上のソロと中村紀のタイムリーの2点のみで引き分け。開幕特有の雰囲気の中で停滞していた打線が森野の号砲でつながった。

 そして4回、決勝点となる1点を奪ったのも森野だった。無死一塁から追い込まれた後、ボークで無死二塁。直後のフォークに空振りしたが、再度のボークで命拾い。最後は内角の変化球をつまりながらも右前に落とした。運も味方につけていた。

 「不安?

 もうないですね。痛みもまったくない」。森野は胸を張った。まだ左手にはテーピングが巻かれている。試合後も左手のリハビリを行っている。ただ一時は15キロ程度まで落ちた握力も今は65キロ程度に回復しているという。開幕前はぶっつけ本番のシーズンに対して「影響がなければいいなという感じです」と不安を除かせていたが、開幕戦で二塁打を放つと、この日は早くも1号。結果が不安を吹き飛ばした。

 「やっと出航したな。長い船出に出たというところだろう。昨日は1日、港に停泊していたからな」。開幕2戦目での今季初勝利。リーグ優勝、連続日本一の完全制覇へ第1歩を踏み出した落合監督はペナントレースを「航海」にたとえた。前日は18年ぶりの引き分け発進。試合後は打線の停滞ぶりを「いくら調整してきてもきょうの1戦だけは特別なんだ」と分析した。言葉通り、開幕の気負いから解放された打線が5点を奪った。長い、長い、戦いの旅。出航の合図となったのは森野の復活弾だった。【鈴木忠平】