<巨人3-4中日>◇1日◇東京ドーム

 中日中村紀は、バッターボックスの中で、右腕を突き上げた。同点の9回先頭、上原の初球。甘く入った137キロ直球をフルスイングした。一直線に左翼席に伸びる打球に、バットを左手に持ったままガッツポーズ。ピョンピョンと飛び跳ねてバットを放り出すと、続けて左腕も突き上げた。

 中村紀「初めから何でも振ってやろうと思った。打った瞬間に入ったと思った。本当に完ぺきだった。上原投手から初めて打った」。

 0-3からの逆転劇を締める2試合連続の2号ソロ。日本代表の大黒柱候補に、痛烈な一撃を与えた。過去6打数無安打。この日も三ゴロ、空振り三振、空振り三振。だが通算10打席目で、日本代表星野監督の目の前で、ぶちかました。

 前日3月31日、日本代表の第1次候補選手77人が発表されたが、名前はなかった。「選ばれないだろうとわかっていたから」と無念を胸にしまい込んだ。かつて日本代表の4番を務めた誇りをバットに込めた。試合後は「そのへんは全然意識してない。枠に入ってないしね」と静かに話した。

 落合監督は「こういう勝ち方だろう、展開通りになったな」と逆転勝利にも冷静だった。中村紀は開幕から4試合連続安打中で打率も3割1分3厘と好調をキープ。3勝1分けの開幕ダッシュを導いている。「(連続安打は)いつとぎれるか、わからへんからね。でもまだまだこれからや」。日の丸のユニホームは着られなくても、その勝負強さは、2年連続日本一を狙う中日にとって頼もしい存在だ。【益田一弘】