<巨人6-5中日>◇3日◇東京ドーム

 巨人がついに目覚めた。9年ぶり3連発で中日を逆転、連敗を5で止め今季初勝利を挙げた。1-5の7回、33歳バースデーの高橋由伸外野手が1号3ラン、今季初スタメンの2番亀井義行外野手(25)が同点1号ソロ、そして侍・小笠原道大内野手(34)がこの日2発目となる2号決勝弾。中日のエース川上を一気に沈めた。巨爆打線の威力を見せつけて、原巨人は4日から首位阪神を東京ドームに迎え撃つ。

 夢でも見ているようだった。3連発での逆転劇に、右翼席の興奮が収まることがなかった。高橋由の3ランがすべての始まりだった。敗色の漂い始めた重苦しい雰囲気を1球で変えた。続いた亀井は「打った球もわからない」と、興奮しながらダイヤモンドを1周した。ネクストサークルにいた小笠原は、その光景を見ながら武者震いをしていた。「身震いがした。どうしようかと思った」。そのまま打席に向かうと、内角高めの速球を強引に右翼ポール際へ運んだ。

 たった1球が、巨人に最高の逆転勝ちを呼び込むきっかけになった。4点を追う7回2死一、二塁、高橋由が大学時代からのライバル川上を打つ。シュート回転しながら真ん中に入ってきた甘い球を見逃さなかった。「それまで甘い球はなかった。前に飛ばせたのはあの1球くらい」と振り返った。前夜、誕生日が同じ4月3日の上原と誕生日を祝いあった。祝いの席の会話もチームを思う話し合いに変わった。「1つ勝てば変わる。ワンプレー、1球の重みを感じながらやらないといけない。ちょっとしたことで試合は変わるものだから」と、2人の意見は一致した。33歳の誕生日を自ら祝うアーチは、その1球に集中した結果が生み出した。そして、チームの闘争心を呼び起こした。

 亀井はこの日にかけていた。オフに高橋由とは沖縄でともに自主トレを行った。「ライバルだと思われてないから誘ってもらえるのかも知れないけど、野球の取り組み方とかいろいろ教わった。いつかは中堅と右翼で並んで出場したい」と話していた。この日の先発を前夜に言い渡されると、川上をビデオで何度も繰り返し見て、目に焼き付けて臨んだ。「それまで三振だったので思い切って行こうと思った」。結果は自分でも驚くものだった。

 小笠原は連敗中も闘争心をたぎらせてきた。5連敗中、2度は最後の打者となった。それでもうつむかず、胸を張ってベンチに引き揚げた。「ずっと同じ気持ちでやってきた。下だけは向くのをやめよう。いつか光は差してくるって思ってました」。4の4、この日2本目となる決勝弾に巨人ファンの誰もが酔った。7回終了後に交代しベンチへ下がったが、小笠原コールは鳴りやまなかった。

 99年以来の3連発で、長いトンネルを脱出した。今季、オープン戦でも4点が最高だった打線が6得点。呪縛(じゅばく)から解放された巨人が、いよいよ真の強さを発揮する。【竹内智信】