<阪神2-0中日>◇9日◇甲子園

 猛虎のおっさん左腕が好投した。阪神下柳が恐竜打線を相手に7回を2安打無失点に抑え、今季2勝目。チームの開幕4カード連続勝ち越しに大きく貢献した。金本の記録達成はならなかったが同じ“不惑仲間”のためにハッスル。来月40歳になるけど元気なのはアニキだけやないで。不振の今岡も好調鳥谷もいいヒットを打ったし、きょうも行くぞ…って、敵は雨模様の天気だけか?

 目の前にある1戦の「重み」を感じ取っていた。同学年の金本が2000本安打にリーチをかけた試合。下柳が敬意を込めたマウンドさばきを披露した。中日野手の打ち気をそらせる。3回。先頭森野に右翼への二塁打を浴びても動じない。谷繁、チェンを抑えて2死。しぶとい荒木も気迫で封じた。強烈なゴロを自ら身を挺して止め、素早く一塁へ送球。同点のピンチをしのいだ。

 リードを許すわけにいかなかった。この日はスライダーやシュートの制球がさえ、プロ18年目の投球術で中日戦2連勝をたぐり寄せた。登板前から、下柳は心に決めていた。

 下柳

 「カネが打って負け試合」というわけにいかんやろ。(翻弄させた中日打線で)スイングしているヤツもおったけどな。

 細心の投球で、金本の偉業に花を添えるつもりだった。8日。ナイターを戦う一塁側ベンチには、下柳の姿があった。寒さの残る甲子園。登板前日の大切な夜にもかかわらず、防寒着をつけ、その瞬間を心待ちにした。ともに今年40歳。そして、ともに03年からタテジマの一員となった。タイガース強化の「両輪」としてチームの先頭に立ち、2度のリーグ優勝に導いた盟友だ。

 下柳と金本は、互いに強烈なシンパシーを感じている。06年4月9日横浜戦。金本が904試合連続フルイニング出場の世界新記録を樹立したとき、セレモニーでリプケンのバットを手渡すプレゼンターを矢野とともに務めていた。

 「骨折しても出続ける姿を近くで見てきたし、本当にすごい精神力。刺激というか、我々も簡単には休めない」と感服していた。一方、下柳が昨年7月6日・中日戦で100勝を挙げたときは、金本から「中継ぎと先発でよくここまで勝てた。先発だけだったら、もっと勝ってる」と称えられた。

 金本が鉄人なら、下柳は鉄腕だ。この日は7回を投げ、散発2安打に抑えて無失点だった。今季初登板だった4月2日広島戦でも7イニング2失点。今季2連勝の滑り出しで、対中日戦2連勝の立役者になった。

 2試合連続で7イニング以上投げたのは06年8月30日中日戦、同9月9日横浜戦以来、2年ぶり。しかし、ともに勝ち星がついたのは移籍後初めてだ。岡田監督も左腕に全幅の信頼を寄せている。

 岡田監督

 低めを突いた下柳らしい投球。安打は打たれたけど、ピンチらしいピンチはなかった。普通に行けば完封してるけど、勝てる試合は勝たないとな。

 最後は久保田、藤川の救援を仰いだが、スタミナ、制球ともに安定感は輝いていた。過去にFA宣言した際には、金本から電話が掛かってきた。「残って一緒にやろうや」。ベテランの心意気が、虎をたくましい常勝軍団に育てた。【酒井俊作】