<ソフトバンク3-10西武>◇15日◇福岡ヤフードーム

 おかわりくんの“骨折弾”が飛び出した。西武の中村剛也内野手(24)がソフトバンク戦の6回、左翼席に9号決勝ソロを放ち、西口文也投手(35)に今季初勝利をプレゼントした。11日オリックス戦で死球を受け、左ほおを骨折した。食事の際にはまだ痛みがあるが、気合のフルスイングでベテラン右腕を援護した。チームは6カード連続勝ち越しを決め、貯金を今季最多14に伸ばした。

 集中力が、痛みを忘れさせた。3-3の同点に追い付かれた6回2死。迷いのない中村のフルスイングが、パウエルの142キロをとらえた。「ツーシームだと思います。前の打席でGG(佐藤)さんに直球系で勝負していたので、それを狙ってました」。読み通りの初球は、左翼スタンドに陣取る西武ファンの前へ。値千金の決勝ソロとなった。

 「みんなで西口さんを勝たせたいと言っていたので、良かったです」。まだ半開きしかできない口を開け、ニンマリと笑った。11日に側頭部死球を受け、左ほおを骨折。全治約4週間。それでも休まず、打席に立ち続ける。「打つ時は痛くない。食べる時ぐらいですかね」。力強いスイングは変わらず、骨折から3試合目で待望の1発だ。

 食べ盛りの24歳に、食事の制限があるのはつらい。口を大きく開けたり、強くかんだりできない。それでも骨折してすぐの宮崎遠征では、地元の名物につい手を出した。「地鶏に挑戦したけど、やっぱりダメでした。ミートソースのスパゲティに切り替えました」と泣く泣く断念。好きなものを好きなだけ食べられないストレスは、豪快なアーチが忘れさせてくれた。

 同じポッチャリ体形で、中村のやる気を引き出しているデーブ大久保打撃コーチは言う。「いま頑張れば、10年レギュラーをやれるという正念場。たとえば、足を肉離れしたウサギでも、ライオンに追いかけられれば逃げる。それをサンペイ(中村)に言ったら『僕がウサギだったら、ライオンを食べます』だって」。たくましい精神力に驚いたという。

 6番中村の9号ソロを引き金に、細川の7号ソロ、9番ボカチカは2試合連発の10号ソロでダメ押しした。「ボカチカに抜かれちゃったんですよね」。痛みより、今はハイレベルなチーム内の本塁打競争の方を気にしている。骨折などまるで感じさせない活躍で、6カード連続勝ち越しのチームは今季最多の貯金14。白星も「おかわり」し放題だ。【柴田猛夫】