<広島3-1西武>◇29日◇広島◇2回戦

 もう並んじゃった!

 広島は西武を3-1で下して交流戦5勝3敗とした。「5勝」は昨年24試合で何とかつかんだ数と同じ。昨年までの姿はどこにもない。それを象徴するように過去3年間でやられ放題だった西武涌井を初めて攻略。4回に栗原、前田智の連続三塁打で主導権を握り、ルイス以下の継投で逃げ切った。力投のルイスはリーグ単独トップの7勝目。さあ、仙台・札幌シリーズが楽しみになった。

 数秒前のVTRを見るように前田智が猛烈な勢いで三塁ベースに駆け込んできた。広島市民球場の1万5000人のファンはこの球場ではめずらしい「連続三塁打」に興奮したのか、スタンディングオベーション。大きな先制の1点を西武涌井に浴びせた。

 最初のクライマックスは4回に訪れた。1死から栗原が右越えに三塁打。右翼のG・G・佐藤がクッションの処理を誤り、栗原はゆうゆう三塁に到達した。このあと前田智の三塁打が出るのだが、栗原の一振りをスルーするわけにはいかない。ほんの24時間前、栗原は絶望のふちにいた。

 3度の満塁機で凡退。9回の1死満塁で投ゴロ併殺に倒れ、主砲は敗戦の責任を1人で背負い込んだ。「長い1日でした…」。悔しすぎた。でも、切り替えた。「消化できていると思いますよ」。若手や控え組に混じって早出特打に顔を出し、汗をしたたらせた。汗とともに「5・28」の悪夢も体から流した。

 そんな主砲の姿はチームに伝わった。前田智が続いた。「犠飛でいいと思っていたけど、甘いところにスーッと入ってきたからあわててバットを出したよ。いいんじゃない。勝ったから」。珠玉の1点だ。3回までパーフェクトに抑えていた先発ルイスの調子から言っても大きかった。その後、梵に中前にしぶとく落として2-0。ルイスはクールに手をたたいていた。

 「激走」はもう1つあった。石原だ。追加点がほしい2-1の6回2死満塁。平凡な遊ゴロでも全力で走った。一塁ヘッドスライディングで間一髪セーフ!

 「ああいう当たりだったから走ることに集中していた。自然とああなりました」。勝利をグイっと引き寄せる走りだった。

 栗原はサラリと言った。「昨日は昨日ですよ」。今のカープには1敗を受け流す強さがある。【柏原誠】