<中日3-7日本ハム>◇6日◇ナゴヤドーム

 日本ハムが梨田昌孝監督(54)の攻めの采配で中日に逆転勝ちした。4回までウッズのソロ2発に抑えていた多田野数人投手(28)に5回1死二、三塁から迷わず代打を送り、この回4安打3点で逆転。2番遊撃で先発させた高口隆行内野手(24)がプロ初猛打賞を記録するなど、先発野手全員の17安打で7点をもぎ取った。主力に故障者が続出する中、指揮官のタクトが極貧打線の中でも“伏兵”の集中打を呼び込み、交流戦9勝4敗で首位をキープした。

 ギャンブルの勝者はすがすがしい表情だった。試合後、笑みを浮かべながら話す梨田監督の言葉は力強かった。「失敗したときの翌日の記事が頭をよぎったけど、前向きに攻めていくしかないからね」。序盤は拙攻続きも、イチかバチかの積極采配が大勝劇を呼び込んだ。

 2点を追う5回だ。1死二、三塁で先発多田野に代打小田を送った。「2アウトなら代えるつもりはなかったけど(走者が)2人出ればとは思っていた」。防御率1点台の投手を降板させ、勝負に出た。「自分でも早いと思うけど何か流れを変える意味で、アクションを起こさないと。ぐちぐちしていれば遅れる」。指揮官の決断だった。

 代打小田が凡退したが、2死から1番に起用された紺田の適時打に続き、高口の右中間三塁打で計3点をゲット。3回まで毎回の4安打ながら無得点のまずい攻めが、うそだったような逆転劇だった。猛打賞の紺田は「セ・リーグの球場(DH制なし)なので勝負どころだと思った」と言う。指揮官の積極的な姿勢が、うまく野手に伝わった形になった。

 プロ初の猛打賞を決めた高口も逆転打を振り返り「何とかしたかった。どんどん打ちにいこうと思っていた」と顔を紅潮させた。05年入団で希望枠八木と同じ創価大から6巡目で入団。06年新人王の左腕に比べ、日陰の生活が長かったが、今季頭角を現した。初安打、初打点などに続き、この日は初の1試合3打点。ドラフトで指名されなければ、バーテンダーの職を考えていた野手が積極采配にこたえた。

 活気づいた打線は小技を絡めながら17安打を放ち、本塁打3発の中日に大勝。梨田監督は「水鉄砲みたいな感じ」と笑ったが、昨年の日本シリーズで完全リレーをされた屈辱の地で、三たび今季最多タイの貯金8とした。交流戦首位タイもしっかりキープ。「野球は難しいよね。(代打)小田は失敗したけど、結果的には良かったからね」。攻めの一手に達成感が漂っていた。【村上秀明】