<西武6-3阪神>◇12日◇西武ドーム

 強い阪神だって負けるときはある。西武に3-6と敗れ、連勝は6でストップした。敗戦の中でもキラリ光る活躍を見せたのはやはり、主砲の金本知憲外野手(40)だ。6回に西武涌井から、一時1点差に迫る10号ソロを放った。2ケタ本塁打は15年連続で、阪神の40代では1975年(昭50)のアルトマン以来。空砲に終わったが、頼もしい存在感をたっぷり見せつけた。負けても交流戦首位、中日との8・5ゲーム差は変わらず、仕切り直して交流戦ラストスパートだ。

 無表情のままダイヤモンドを一周した。まだ1点ビハインドの得点差。打ち砕いた球種を考えても、金本に満足感はなかった。これが通算404本塁打を積み重ねてきた男にしてみれば、当たり前のしぐさだったのかもしれない。

 2点を追う6回だった。初対決の涌井にチームは無得点に抑えられていた。1死走者なし。ボールカウント2-2からの5球目。ほぼ真ん中に来たカットボールを右翼スタンドにたたき込んだ。初回2死二塁のチャンスでは四球で歩かされた。得点するには、ひと振りしかない。そんな主砲ならではの1発だった。

 「今日は何もないだろう。(バットを)合わしただけだよ。(涌井は)真っすぐがいいと聞いていた。打ったのはスライダーやろ。ええ真っすぐも投げとったけど、意外と変化球ピッチャーやったな」。

 40歳を超えた今、若い伸び盛りの投手のストレートを打ち砕くことを1つのモチベーションにしている。チームの敗戦に、試合後「何もない」と繰り返した。6試合、25打席ぶりの10号ソロ。「10本ぐらいでガタガタいうなよ」。入団3年目の94年以来続ける2ケタアーチを15年連続に伸ばしたが、こちらも一笑に付した。

 40代の10本塁打以上は96年巨人落合以来12年ぶり。阪神では75年、42歳で12本塁打をマークしたアルトマン以来、実に33年ぶりとなった。それでも金本は「そんなの、何人でもいることだろう」とサラリ言う。40歳でただ1人、40発を超えた南海門田44本塁打の記録は、目標の1つとして脳裏にしっかり刻まれている。05年に自己最多40発を放った男にとって、残り3発での「40代球団新」は興味の対象ではない。

 連勝は6で止まった。ただ交流戦優勝のライバル楽天も、セ・リーグ2位中日、3位巨人も敗れた。交流戦単独首位、セ界ひとり旅の現実は変わらない。自身も交流戦首位打者4割3分1厘とひた走る。リーグでは打点2位、打率3位と、40代でのタイトルを目指せる位置にもいる。

 試合前には11日、背中に死球をお見舞いされた西武星野から丁重に頭を下げられた。避ける際、手術した左ひざを地面に打ち付けていた。それでも、ストレッチに苦悶(くもん)していた表情を緩めて「大丈夫、大丈夫」と笑顔を見せた。そして試合で1発回答。この鉄人の目指す頂きはやはり、どこまでも高い。【片山善弘】