<中日5-4西武>◇17日◇金沢

 中日中村紀は左翼に伸びる打球を見て、バットを放り投げた。同点の9回2死走者なし。昨季まで同僚だった岡本真の甘いスライダーをフルスイングした。この日2本目のアーチはサヨナラの13号ソロ。ホームでは仲間の手荒い祝福を受けた。

 中村紀

 最後だし、甘い球なら狙ったろうと思った。いい角度で飛んでくれたと思う。岡本君はいい投手だけど、カウントが良かったぶんだけ、打てたんかな。

 「不敗神話」を自らのバットで続行させた。2点を追う7回には12号同点2ランを右翼場外にかっ飛ばした。中村紀が本塁打を放った試合は昨年9月7日ヤクルト戦から15戦15勝。4安打4打点2本塁打で、「不敗神話は続いている。自分で続けたで。こんな日もあっていいやろ」と笑顔を見せた。

 サヨナラ弾は通算9本目で、歴代記録で並んでいた王、若松を抜いて単独3位に浮上。1位清原、2位野村の記録にも手の届くところにきた。「長いこと続けていればいいことある」と上機嫌だった。

 落合監督のひと言で生まれ変わった。入団1年目の昨夏。「能書きをたれるなら、オレの前でたれてみろ」と説教された。ひたむきな姿勢が求められていることに気がついた。それから1年を経て、落合監督は言う。「去年はまだ『おれは中村ノリだ』という意識があった。今年はない」。これでチームは交流戦2度目の連勝。白星を引き寄せた中村紀は「打てたこともいいけど、チームが勝つことに意義がある」と胸を張った。【益田一弘】