<日本ハム2-1ロッテ>◇29日◇札幌ドーム

 クライマックスシリーズ(CS)はあきらめない。日本ハムの27歳トリオが、CS進出へ負けられないチームを救った。ロッテ戦で核弾頭田中賢介内野手(27)が、11号ソロを含む4打数2安打2打点とバットで貢献した。1-1の同点で迎えた8回裏1死一、三塁の場面で三塁走者の糸井嘉男外野手(27)が、田中の二ゴロの間に好走を見せて本塁突入に成功。足で決勝点をたたき出した。鶴岡慎也捕手(27)もエース・ダルビッシュを好リード。同い年の3人がそれぞれの役割をまっとうした。

 当たりは最低でも、結果は最高だった。“凡打のヒーロー”田中は、一塁ベース上で両腕を高く突き上げた。「ラッキーです。なんかうれしかったですね。(ガッツポーズは)自然に出た」。8回1死一、三塁のチャンスで最高潮に盛り上がる4万人が、一瞬の冷や汗。本人も「やっちゃった」と振り返るボテボテのゴロ…だが、二塁手塀内がジャックルし、本塁送球よりも早く三走糸井がホームに突っ込んだ。形は悪くても、がけっぷちのチームを救った正真正銘の決勝点だ。

 チームで唯一143試合フル出場を続ける27歳。6回には右中間へ2カ月半ぶりの1発を放ち、試合を動かしたのも田中。両投手の力投が続いていただけに「本塁打じゃないと点が入らない感じだった」。狙い通りの放物線は、歓喜のドラマへのプロローグだった。

 マッチの「スニーカーぶるーす」がはやり、「オレたちひょうきん族」が始まった1981年。田中が産声をあげた2カ月後、京都に誕生したのが糸井だ。8回、左翼線に二塁打を放ち突破口を開くと、決勝のホームに向かって「いつもより必死なマックス」で激走。田中も「(糸井)嘉男に感謝です」と真っ先に同い年の韋駄天(いだてん)をたたえた。ダルビッシュを好リードで引っ張ったのも、27歳の鶴岡。8回の好機にバントミス(捕邪)でチャンスをつぶしかけたが、田中の決勝打が仲間を救った。

 秋を迎えたシーズンのクライマックス。ダウンジャケットを着込んで帰路についた田中は力を込めた。「とにかくあさって(10月1日、楽天戦)勝つ。そうすればロッテにプレッシャーがかかる」。半袖で車に乗り込んだ糸井も、最後に球場を出た鶴岡も思いは同じ。27歳トリオが、消えかけた激闘の火に再び油を注いだ。【本間翼】