<ヤクルト3-8阪神>◇5日◇神宮

 正念場でまた阪神石川俊介投手(23)が踏ん張った。6回、3点差まで迫られ、なおも2死二塁。雨が強まった、最後の踏ん張り時。「歩幅を狭くしたり、抜けても良いから腕を振ろうと思いました」。1球ごとに右手をポケットに入れ、ロージンを触る。5番福地を低めスライダーで二ゴロに仕留めた。

 久々に思い出の地を踏んだ。昨年の11月13日。上武大4年生だった石川は、明治神宮大会の準決勝で優勝候補・東洋大と対戦。怪腕・大場(現ソフトバンク)と8回まで無失点の投げ合いを演じ、一気に評価を高めた。だが最後は投げ負けた事実だけが残り、試合後は号泣。それから3カ月後の今年2月。阪神石川は大場を筆頭とするエリートたちへの逆襲を誓った。

 石川

 現時点では負けている。自分は大学トップ3に入れなかった。意識をしていないのが事実ですね。相手が思ってくれて、初めてライバルになれるんで。だから、今はいかに自分の力を信じられるか。プロでは負けないように頑張らないといけない。

 自信を深め、同時に反骨心が芽生えた日以来の神宮球場のマウンド。2回1死二、三塁のピンチを切り抜け、6回2死までノーヒットピッチングを続けた。「ヒットを打たれてスコアボードを見て『あっ1本なんや』と初めて気づきました」と苦笑い。それほど集中しプロ2勝目をつかんだ。

 デーゲームで巨人が勝利し、追い詰められた試合で結果を出した。初先発初勝利(9月22日、横浜戦)も東京ドームで巨人に3連敗した後だった。「気持ちを出して投げるだけでした」というルーキーが再び救世主となった。【佐井陽介】