守備に優れた選手を選ぶ「三井ゴールデン・グラブ賞」の08年度受賞者が29日、発表された。セ・パ両リーグとも4人が初受賞。阪神からが新井貴浩内野手(31)が初受賞で、赤星憲広外野手(32)は2年ぶり6度目の受賞となった。オリックス・カブレラは投票数が「該当者なし」より少なかったが、該当者なしが過半数となった場合に受賞者なしとする規定により受賞となった。37回目の同賞で初のケース。表彰式は11月26日に行われる。

 走攻守トータルでの貢献を目指す男には、実にうれしい初受賞だ。練習を終えた新井に一塁手のゴールデングラブ賞の報が届いた。人ごとのようにステップアップを遂げた自分に驚いて見せた。

 「びっくりしました。光栄です。自分で言うのも何ですが、夢がありますよね。自分みたいな下手くそな選手がこうして賞をとれるようになるなんて。思ってもみなかったんで」

 91試合で一塁を守り、失策わずか1。守備率9割9分9厘はセの一塁手で断然トップだった。巨体を揺らしながら、投手の胸を目がけて丁寧にトスする「ハートフル」な守りはチームメートの間でも話題になるほどだった。

 わずか3年前の05年。主に三塁で23失策。2位に8個差をつけるリーグワーストの失策王だった。キングとなる43本塁打を放ちながら「アライ」の名になぞらえ「守備が荒い」と揶揄(やゆ)されもした。

 悔しさをバネに人一倍、泥にまみれた。失策数は年々減少。一塁本格転向となった今春も和田守備走塁コーチの特守を幾度となく受けた。昨年三塁でリーグ最高守備率(9割7分)を残しても届かなかったマイナスイメージを完全にぬぐい去った。くしくも真弓新監督が標榜(ひょうぼう)する『練習はウソをつかない』との教えを自らの体を持って示した。

 「打つだけじゃないですから。走ることも守備も大事。エラーばっかりして下手くそだった自分にたくさんノックしてくれた人たちに感謝したい」。守りの野球をテーマに掲げた真弓阪神。頼もしさを増した「練習の虫」が来季もドンと一塁に座る。【片山善弘】