やっぱり節目には強かった。2年目の日本ハム中田翔内野手(19)が9日、初の紅白戦に「6番三塁」で出場し、第1打席の初球に左中間場外へと消える推定140メートル弾を放った。昨年のキャンプでも、初の対外試合だった阪神戦で左翼への場外弾デビューを飾っており、2年連続のロケットスタート。昨年はキャンプ後半からペースダウンして2軍落ちしたが、今年は心身ともに“オトナ”に変身し、1軍定着に期待感たっぷりの初実戦となった。

 09年最初の実戦は、中田の1人舞台だった。2回、左腕八木の135キロ直球を振り抜くと、打球は一瞬で青天に吸い込まれた。外野手も黙って見送ることしかできない、左中間場外の砂浜まで到達する推定140メートル弾。「最近はフリー打撃でもよかったし、いいフォームで打てた。(自分の)誕生日にも打ったんですよね。やっぱり何か持ってますね」。昨年よりも黒く、精悍(せいかん)になった顔に笑みをたたえた。

 阪神との練習試合でデビュー弾を放った昨年と結果は同じでも、中身は違う。左足を高々とあげ、豪快にフルスイングする一本足打法だったのがちょうど1年前。オープン戦に入ると変化球にタイミングを崩され、三振が増えていった。現在はすり足打法。「今の方が断然いいです。体の開きが早いので、それを意識して練習しています」。コンパクトに見え、怖さがなくなったように感じるが、飛距離は少しも落ちていなかった。ネット裏に陣取った巨人、阪神ら他球団のスコアラーも驚きの声を上げた。開幕で対戦する楽天の石山プロスカウトは「体も締まったね。(甘い球を)見逃さないのはさすが。打てれば守備だってついてくるだろう」と警戒。高校時代から中田を追いかけていたマリナーズの山本スカウトも「今でも連れていっていいというのなら、そりゃあそうしたい」と称賛した。

 1年間のプロ生活が、中田を“オトナ”にした。周囲が興奮する特大アーチも、表情を変えずにダイヤモンドを回った。「飛び跳ねるほどうれしいというわけじゃない。守備でいいところを見せたかったし、ホームランよりも、早くボールが飛んでこいと思っていました」。結局守備機会はなし。紅白戦後は約1時間の居残り特守で汗を流した。前日に「話にならない」と一喝されたダルビッシュは球場にいず、リベンジ弾を見せることはできなかったが「報告するほどのことでもないでしょ」と舞い上がらなかった。

 今キャンプ最初の休日にはドラフト4位土屋健二投手(18=横浜)を食事に誘った。プロに入って初めての後輩。「今のうちにしっかり(練習を)やっておけよ」とエールを送り「遠慮せずにどんどん食べろ」と言う一方、自分はサラダを頼んでいたという。梨田監督も「集中力が増してきた。あとはゲームで結果を出すだけ」と期待を寄せた。

 宿舎への帰り道、女性ファンから袋を手渡された。バレンタインデーも近い2月上旬。中を手で探り「おっ、この感触はもしや!」と取り出したのは、なんと「鮭とば」。周囲が大爆笑に包まれる中、“コドモ”のような笑顔ではにかんでいた。【本間翼】

 [2009年2月10日10時57分

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