<西武2-4日本ハム>◇17日◇西武ドーム

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(22)がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表でチームメートだった西武涌井秀章投手(22)とのエース対決に投げ勝って、節目の通算50勝目をマークした。完投勝利は逃したが、8回を3安打、2失点、8三振の好投で今季2勝目。ドラフト制後、高卒でプロ5年目以内で50勝以上した投手は02年の西武松坂(現レッドソックス)以来、史上8人目。日本ハムは3連勝で、西武、楽天と並んで首位に浮上した。

 白い息を吐きながら、ダルビッシュは苦笑いで節目の勝利を振り返った。「6回まで、あまりにも寒くて体が動かなかった。でも結果的に何とか抑えられてよかった」。高卒5年目以内での50勝到達は02年松坂以来の快挙だが、特別な感情はなかった。

 この日の埼玉・所沢地方は最低気温9・7度。序盤はボールを指に引っかけて制球を乱した。だが冷え切った外気とは対照的に、心を熱くする相手がマウンドにいた。涌井だ。公私ともに親しい同期生との投げ合いは通算4度目。寒かろうが、敵地だろうが、譲るわけにはいかなかった。

 体が温まり始めると、フォークボールを低めに集め西武打線から8奪三振。6回2死一、二塁のピンチも、141キロのフォークでGG佐藤を空振り三振に仕留めた。WBCでは涌井、楽天田中と3人で行動することが多かった。準決勝以降、慣れないブルペン待機の際も、涌井の存在が支えの1つだった。お互いにチームでの持ち場とは違う立場だけに、交わす会話の1つ1つが気持ちを落ち着かせてくれた。

 開幕戦直前、楽天岩隈とのサムライエース対決が注目される中でも、「涌井と投げ合っているのが一番楽しい」と話したほど。50勝に顔色を変えなかったダルビッシュだが、「対涌井の時でよかった。涌井はあまり調子が良くなかったみたいで、僕もリズムに乗れなかった」と冗談を交え1度だけ表情が緩んだ。

 海の向こうでは、イチローが記録を更新。WBCで世界連覇した直後の会見場にTシャツ、サンダル姿で登場したダルビッシュに対し、「おい、私服かよ」とからかったのが、ユニホーム姿のイチローだった。前人未到の大記録を達成した天才打者をも仰天させるマイペース。「今日はツーシームで、ストライクが取れなかった」。冷静に自身の状態を分析し、勝負球をフレキシブルに変えていく堂々とした姿は、試合でもマウンドを降りても変わらなかった。

 チームは今季2度目の3連勝で首位タイに浮上。ダルビッシュは「結果オーライのピッチングだったので、次はもっと内容のある投球をしたいです」。視線はすでに、51個目の白星に向いていた。【本間翼】

 [2009年4月18日8時29分

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