<阪神8-4横浜>◇28日◇倉敷

 今季は不調続きで、アニキにからかわれ続けた阪神5番新井貴浩内野手(32)が、ついに本領を発揮した。同点の7回、4番金本が敬遠された1死満塁の場面で、決勝2点タイムリー。完全復活の4安打4打点だ。チームは5割復帰で2位タイと、首位巨人追撃態勢が完全に整った。

 大声援が鳴り響く中、ゆっくりと打席に向かう。「力まないように、力まないようにと思って」。直前、和田打撃コーチから「思い切っていけ」と熱いゲキを飛ばされたが、心はクールにバットを構えた。

 同点で迎えた7回1死二、三塁。3安打を放っている新井の目の前で、内野安打1本の4番金本が敬遠された。1死満塁。横浜吉川から3球ファウルで粘り、カウント2-1からの5球目だ。全身を使って145キロ内角シュートを振り抜き、ライナーが左翼線を走る。決勝2点二塁打。二塁ベース上、新井は大きくパシッと手をたたいた。

 ついに殻を破った。今季から金本の後ろ、新5番に任命された。想像を絶するプレッシャーに苦しみ、開幕から不振に陥った。実はこの2点二塁打は、金本が四球で歩いた直後の場面で、13打席目にして初めてのヒット。「新聞に載ってたんで頭には入っていた」。脳裏に焼き付いていた嫌なジンクスを振り払い、新しい1歩を踏み出した。

 野球の神様は見ていたはずだ。9日の広島戦(甲子園)。新井はすべて走者を背負った場面で4打数無安打に倒れ、チームも惜敗。試合後、ベンチ裏で約20分間スイングを続けた。さらに次々とナインが帰路につく中、室内練習場で、汗だくでマシンと向き合っていた。その後も甲子園、遠征先の球場を問わず、試合前の早出特打で汗を流し続けた。

 この日は先制の右翼フェンス直撃2点二塁打を含む4安打で4打点。打率も2割4分7厘まで戻った。真弓監督は「当たりが出てきたね。前で(金本が)歩かされた後に打った。プレッシャーがかかるところで打って良かった」。チーム浮沈のカギを握る新5番。本格的に復活ロードを歩み始めた。【佐井陽介】

 [2009年4月29日9時8分

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