<ソフトバンク3-2阪神>◇20日◇福岡ヤフードーム

 真弓明信監督(55)の決断は空転に終わった。1点を追う8回1死三塁の場面で、08年の開幕からフルイニング出場を続ける3番鳥谷に、代打桧山を送った。虎党からも驚きの声が出るジャッジだったが、結果的に桧山は三振。9回に一度は追いつき、延長戦に突入したが、最後は延長10回に江草が松中にサヨナラ弾を浴びた。阪神は引き分けをはさんで、4連敗。光明を見い出せないまま、借金は「6」まで膨らんだ。

 あまりにも大きな決断に球場が騒然とした。1点を追う8回表1死三塁で、3番鳥谷が打席で向かうはずだった。ここで見慣れない光景が広がった。ベンチを出た真弓監督が審判に告げる。代打桧山-。昨年の開幕戦からフルイニング出場を続けてきた次代のチームリーダーをグラウンドから下ろした。

 真弓監督

 何というか、あまりにも感じが出ていない。思い切って代打を出した。練習ではそうでもないが、試合でできていない。

 3番鳥谷は09年オーダーの目玉だった。しかし5月に入り、打撃は急降下した。この日も快音はなく、11打席連続ノーヒット。真弓監督は自らの構想に手を入れた。苦渋の決断だ。鳥谷にとっては、代打を送られるのは05年5月10日、ロッテ戦以来となる屈辱だった。

 勝負の一手が、勝利に結びつかないのが、真弓阪神の現状だ。桧山はあえなく3球三振。執念のさい配も空転した。9回に同点に追いついたが、延長10回に松中の9号弾でサヨナラ負け。これで今季ワーストの4連敗。借金は「6」となった。厳しい表情でベンチを後にした指揮官は語気を強めた。「勝ち越さなアカンな!」。周囲を驚かすベンチワークも勝ってこそ生きる。鳥谷は「こういうデキなんでね。仕方がない」と力なく話した。これが次戦につながればいいが、今は重い空気が残るだけだ。真弓監督は「こういうことをきっかけにしてほしい。下を向いて、野球はできない」と鳥谷に奮起を促した。

 就任1年目で夏を待たずに、追い詰められた雰囲気が漂う。5戦連続の1得点は免れたが、この日もたった5安打。貧打の解消にはほど遠く、1点差ゲームは4勝10敗と勝負弱さが際立ってきた。指揮官は当初、緊急補強に否定的だったが、初めて新外国人獲得を受け入れる発言をした。「(球団と)1回、話したよ。何でもかんでも、きっかけにしたい」。南球団社長と会談し、補強に合意していたことを認めた。育成に全力を尽くす方針だったが、それを曲げてでも状況を打開しなくてはいけない。試練の連続。真弓阪神が正念場を迎えている。

 [2009年5月21日11時55分

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