<日本ハム5-3横浜>◇10日◇札幌円山

 東大出身者の意識ではなく、プロ4年間の重みが直球に乗った。横浜松家卓弘投手(26)が腕を振った。8回、3番手でプロ初のマウンドに上がった。日本ハム小谷野を141キロ直球で右飛に仕留め、代打ボッツはフォークで二飛。糸井にはこの日最速の145キロ直球でカウントを稼ぎ、遊ゴロ。3者凡退で三塁側ベンチに戻ると、ナインからハイタッチを求められ続けた。

 敗戦に喜びはない。だが表情は充実感に包まれていた。「3点差だったので8回を抑えれば逆転するチャンスがあると思った。ファームで『あした1軍』と言われてから4日、今まで4年間やってきたことを出せるかどうか、と思っていた」。東大出身投手が41年ぶりに1軍戦で奪ったアウトは、机の上だけで得られる偶然ではなかった。

 東大受験の前日だった。日本史、文化史を参考書などでなぞると、見たところが試験に出た。慶大にも合格しており学力は備わっていたが、プロ野球の世界とは話が違う。「受験勉強はやった分だけ伸びるけど、野球はそうはいかない。プロの人はみんな覚悟ができている」。1軍昇格する厳しさを胸に、4年間で磨いてきた直球を投げ込んだ。

 田代監督代行も2軍監督として成長を見守ってきた。「気持ちのコントロールがうまくなった。今年はボールがよかったし、いい顔してる。(捕手のサインに)首を振ったら変化球だったけど、あいつがいいのは真っすぐ」と目を細めた。松家は「出してもらったところで自分の投球ができるように調整したい」。エリート意識とは程遠い泥臭さを力に変える。【今井貴久】

 [2009年6月11日8時26分

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