<横浜3-2ヤクルト>◇6月30日◇松本

 悪夢を振り切る格好の舞台だった。横浜の守護神山口俊投手(21)がベンチの信頼を自慢の直球で取り戻した。1点リードの9回1死。左腕加藤康から山口にバトンを渡す田代監督代行に、迷いはなかった。「あいつしかいねぇだろ。若い山口が元気をなくしたら先はねぇ」。6月28日の甲子園だった。山口は2点リードを守り切れず勝ちを消してしまった。阪神関本にサヨナラ打を浴びた勝負球が、スライダーだったことにも悔いを残した。

 6番宮本への初球は146キロ直球。内角へ力を込めたボールで捕邪飛。7番相川には150キロを超える直球を3球続けた。最後は中飛。こん身の4球を山口はこう振り返った。「僕の良さは直球で押すこと。打たれた夜、何が足りなかったかを考えた」。屈辱の夜、宿舎の食事会場で田代監督代行に声を掛けられた。「愚痴の酒は飲むな。お前が逃げない限り、おれはお前を使い続ける。酒は楽しく飲むもんだ」。胸が熱くなった。その温かさに応える場所は、マウンドしかなかった。

 7セーブ目の山口の顔には笑顔がなかった。「まだまだこれからやり返さなければ。チームに信頼され、他球団に嫌がられる本物のストッパーになりたい」。先発吉見が6回途中2失点と試合をつくった。木塚、真田、加藤康も無失点でつないだ。「打線がチャンスを確実にモノにして、投手陣がきっちりつなげば勝てる。いい形ができてきた」。2位ヤクルト相手に4連勝で5勝1敗。1点差ゲームをものにした田代監督代行は、チーム再建の手応えを感じ取った。【山内崇章】

 [2009年7月1日9時9分

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