<西武4-3日本ハム>◇8日◇西武ドーム

 ハイペースだ。西武中村剛也内野手(25)の本塁打量産が止まらない。ハーラーダービー&防御率でリーグトップの日本ハム・ダルビッシュ有投手(22)から2回に先制28号ソロを放ち、82日ぶりに1発を浴びせた。74試合を終えての28発は、年間54発ペース。結婚1周年となったこの日、スタンド観戦の麻里恵夫人(27)へ、愛の1発となった。

 中村は打球の行方を、じっと目で追った。「ポールの上だったんで、分からなかった」。2回、左翼ポールのはるか上を越えた打球は、左へと切れながら左翼席最上段に着弾。三塁塁審の手がグルグルと回ったのを確認して、ゆっくりと一塁に駆けだした。「結婚1周年なんで、打てて良かったです。祝砲です」と表情を崩す。これまで放った27本とは比較できない記念日アーチに声を弾ませた。

 日本ハム・ダルビッシュが血相を変え、梨田監督も抗議に走ったほど微妙な判定だったが、飛距離は文句なし。バックネット裏のシートに招待した麻里恵夫人への感謝を、結果で伝えることができた。「今日は好物のハンバーグでお祝いします」。一家を支え、西武の強力打線も支える大黒柱の頼もしさに、麻里恵夫人はとびきりの笑顔で喜んだ。

 2歳年上の姉さん女房にしりをたたかれ?

 記念日には特別に燃える。ちょうど1年前、婚姻届を提出した7月8日のゲームでは4打数無安打。いいところを見せようとして、3三振と力みすぎた。雪辱を期した9月10日、夫人の誕生日にバースデーアーチを放った時の笑顔が忘れられない。記念日のプレゼントは、本塁打しかないと心に決めていた。

 ダルビッシュ攻略の突破口となる先制ソロだけに、価値があった。「苦手意識?

 ないですね」。振り負けない自信が、初球の抜けたスライダーを迷いなくフルスイングできた。4回には中前打を放ち、2点目をアシスト。この日の2安打で、対戦成績は3割3分3厘。昨年は2発、今年は日本人打者でダルビッシュから初めての1発。難敵に土をつけての5連勝で、4番としてチームにも最高の勢いをつけることができた。

 本塁打ペースも上がってきた。20号到達には少し苦労したが、その後は13試合で8発。2試合連発の28号で年間54発ペースは、プロ野球新記録の55発更新も視界にとらえる。「数は気にしない。今日打てて良かったです」と顔色ひとつ変えない。判定に恵まれ、祝砲が一時空砲になりかけての逆転勝ち。幸運をもたらす“勝利の女神”に感謝せずにはいられなかった。【柴田猛夫】

 [2009年7月9日7時46分

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