<ヤクルト3-2中日>◇7月31日◇神宮

 痛っ!

 首位を狙う中日の4番トニ・ブランコ内野手(28)が4回、先発館山から左ひじ付近に死球を受け負傷退場した。ベンチ裏で治療を受けいったん復帰したが、その裏の守備で交代。検査を受けるため、試合中に東京都内の病院に向かった。試合にも敗れ、苦手館山には昨年8月から7連敗。首位巨人には1・5差のままだが、リーグ2冠の主砲が離脱となるとチームに暗雲がたれ込める。

 一瞬で場内の空気が凍り付いた。4回、1死から館山がブランコに投じた2球目だった。内角高めへの直球は、バットを構えていた中日ブランコの左ひじに直撃。リーグトップとなる今季10度目となる死球に、思わず声を張り上げた。

 ブランコはすぐにマウンドの館山をにらみつけて仁王立ち。普段は温厚なドミニカンが怒りをあらわにする姿に、ナインもベンチから飛びだそうとしたほど。トレーナーと通訳がすぐにブランコのもとにかけより、事なきを得たが、一触即発、乱闘かという騒然な雰囲気に包まれた。

 それほど痛みは尋常ではなかった。ブランコは両手をだらりと下げたまま、治療のためベンチに下がると、左ひじにアイシング用の包帯を巻き、約5分後にグラウンドに姿を見せた。

 だが、まだ怒りは収まってはいなかった。ブランコは一塁に向かって走り出すと、途中で急に方向を変え、マウンドの館山に向かって突進する怒りのパフォーマンス。実際に殴りかかることはなく、3、4歩ですぐに一塁へと向きを戻した。

 ブランコは、続く和田の二塁打で三塁に進塁したが、4回の攻撃が終わると、そのまま交代。通訳とともにタクシーで都内の病院に向かった。すでに怒りは収まっていたが、「大丈夫?」の問いかけに「うん。でも、これから病院に行ってくるよ」と、複雑な表情。今後の出場に関しては「待ってみないと分からない」と、言葉を濁した。

 ブランコは開幕から4番に座り、これまで全90試合にスタメン出場。リーグトップの30本塁打、77打点を挙げるなど、昨年オフに退団したウッズの穴を埋めて余りある活躍をみせていた。それだけ、故障となれば、チームにとっても大きな痛手だ。

 落合監督は「知りません。知らないものは知らない」と、多くは語らなかったが、長期離脱となれば、これ以上ない戦力ダウン。巨人追撃態勢が整った中での主砲の負傷に、チーム内にも暗雲が立ちこめた。

 [2009年8月1日10時46分

 紙面から]ソーシャルブックマーク