<ヤクルト2-13横浜>◇13日◇神宮

 今季チーム最多安打での勝利後、ナインとハイタッチする横浜内川聖一内野手(27)の額の汗はもう引いていた。連夜の14号ソロを含む3安打猛打賞で、5打席目を終えた7回に交代。打率3割2分1厘はリーグトップに躍り出た。2年連続の首位打者へ、来るべき男がやってきた。

 1打席目は追い込まれながら先制打を放ち、2回の2打席目は2死満塁で2点適時打。4打席目は初球を左翼席中段へ運んだ。「昨日、今日とお昼に杉村コーチからカツ丼をごちそうになったので、効いたのかもしれません」とちゃめっ気も見せたが、苦しみの中でもがいた過去がある。

 3月のWBC後は睡眠もうまく取れず、開幕後の得点圏打率は1割台に低迷した。チームも浮上できない。7月には両太もも裏に疲労を抱えながら試合に出た。バットを振り続け、夏場のスパートを期していた。「(首位打者は)まだ暫定ですから。8月は大事と思って意識して練習してきた。どこかで爆発しないと飛び抜けられない」。連続タイトルへの意識に「もちろんです」と言い切った。

 “育ての親”である田代監督代行は「やっぱり何かつかんだんじゃないの?」と、うなずくだけだった。振り続けた者にしか分からない境地がある。内川がバットマンレースの主役に立った。【今井貴久】

 [2009年8月14日8時47分

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