<阪神8-2広島>◇23日◇京セラドーム大阪

 逆転の虎だ。追撃の虎だ。前日サヨナラ勝ちを収めた阪神は、この日も7回に代打桧山進次郎外野手(40)の押し出し四球で同点とし、平野恵一外野手(30)の今季初の決勝打で逆転した。乗ってきた。この勝利で今季初の3カード連続勝ち越しとなり、巨人に敗れた3位ヤクルトとは7・5ゲーム差とした。まだまだ厳しい数字だが、巨人に敗れたヤクルトは6カード連続負け越しとどん底状態。奇跡を現実へ、チームは完全に本気モードだ。

 気持ちも、腰も、引いていない。平野は、同点の7回1死満塁で打席に立った。「命がけというか、魂をいっぱい込めた」。カウント2-1からの5球目。201センチのシュルツが投げおろす153キロの内角直球を振り抜いた。右翼線ぎりぎりに落ちた打球は勝ち越しの2点適時二塁打となった。「どう打ったのか、覚えていない。おー(ラインを)切れないと思った」。二塁上ではド派手に両手をたたいた。

 悔しかった。1点を追う5回2死二塁。目の前で代打ブラゼルが敬遠された。2死一、二塁で打席に立ったが、結果は三ゴロ。「前の打席でブラゼルが目の前で歩かされてふがいない結果に終わっていた。もう1度、チャンスで回ってこいと願っていた」。

 2日前の悔しさも晴らした。21日の広島初戦。7点を奪われた2回に一塁へのジャンピングスローが高くなった。一塁手の足はベースを離れていないようにみえたが、判定はセーフで、記録は平野の失策となった。小兵の平野は体全体を使った全力プレーが持ち味。帰りの駐車場では「悔しい。僕の中では軽いプレーじゃない」と語気を強めた。そんなうっぷんも晴らしこの日はお立ち台に登場。平野に続いてタイムリーを放った、神奈川・桐蔭学園の同級生浅井と並び「夢みたい。感極まるものがあった」。

 鮮やかな逆転劇。もう1人の主役は「代打の切り札」桧山だ。1死満塁から同点の押し出し四球を選んだ。22日にはサヨナラ打を放ったばかり。シュルツの制球が乱れていることを見極めて仕事を果たした。

 これで代打での通算打点は「73」となった。「浪速の春団治」と呼ばれた川藤幸三氏に並ぶ球団4位タイに浮上した。「それは気にしていないね。いい場面で使ってもらえるのは幸せ。あれだけの大歓声の中でプレーできるのはなかなかないこと」。40歳は個人記録よりも、打席に立てる喜びをかみしめた。

 7回は打者9人を送り込み、4安打5得点で、今季初の3カード連続勝ち越しを決めた。この日ヤクルトが敗れてゲーム差は7・5。少しずつだが、差は縮まりつつある。平野は言った。「負けられないゲームが毎日続く。『どういう形でも勝つ』と選手全員で話し合っている」。内容よりも、ただ結果だけを追求する。

 [2009年8月24日11時25分

 紙面から]ソーシャルブックマーク