<巨人4-2阪神>◇17日◇東京ドーム

 巨人がいよいよ優勝マジックナンバーを9とし、セ・リーグ3連覇へカウントダウンに入った。先発したウィルヒン・オビスポ投手(24)がプロ野球タイ記録の1イニング4三振をマークするなど、7回を2失点、7奪三振の好投で今季4勝目を挙げた。

 阪神のクリーンアップを、オビスポが長い腕をしならせ切り捨てていった。6回、先頭鳥谷から3者連続三振。3人目の新井を空振りに仕留めた外角スライダーは、大きな落差だった。ボールがバックネットに転々とする振り逃げ。それでもオビちゃんは動じなかった。「バットで向かってくる相手に、自分の腕で立ち向かっていった」。続く林威助を外角直球で空振り三振に抑え、中盤の勝負どころで1イニング4奪三振。51日ぶりに先発の助っ人が7回2失点の好投で、優勝マジックを9に減らした。

 1軍マウンドに飢えていた。7月だけで先発として3勝を稼いだが、外国人枠のあおりを受け、2軍落ちした。頭では分かっているつもりでも、「なぜ」の思いが消えなかった。同じく2軍調整中の李承■に「巨人ではもう投げるチャンスがない。韓国で投げたいんだ」と懇願したこともあった。折れかけた心をつなぎ留めたのは、育ての親でもある小谷2軍投手コーチだった。

 人心掌握にたけた同コーチは「オビちゃんはハングリーだから、当然そう思うわな。腕1本で稼ぐために日本に来たんだから」。心を鬼にし「お前はあれこれ考えるな。いいから黙って準備しとけ。投げるチャンスは必ず来るから」と断じたのは愛情だった。荒れ球の修正も、クイックモーションも、日本野球の心得もすべて教わった3年間。やんちゃなカリビアンも恩師の言葉には従順だった。酷暑のジャイアンツ球場でモチベーションを保ち、出番を待ちに待っていた。

 一本気なオビスポの心情を察し、絶妙のタイミングで先発起用した原監督は言った。「しっかり調整してきた。CSの秘密兵器?

 そうです。非常に大きな選択肢です」。クライマックスシリーズ、日本シリーズの短期決戦では、登板機会のなくなった外国人投手の入れ替えが活発にできる。02年以来の日本一へ。キーマンは第3の先発外国人投手、オビスポだ。【宮下敬至】※■=火へんに華

 [2009年9月18日8時12分

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