<日本ハム3-2オリックス>◇9月30日◇札幌ドーム

 日本ハムの優勝がいよいよ目前に迫ってきた。オリックス戦で3-2と逃げ切り勝ちを収め、連勝で優勝マジックを「4」に減らした。守護神武田久投手(30)が、2安打を許して自ら招いた9回無死一、三塁のピンチを無失点に抑え、33セーブ目。ストッパー転向1年目で初の最多セーブを確定させた。チームは早ければ3日のロッテ戦(札幌ドーム)で2年ぶりのリーグ制覇が決まる。

 右腕1本で、ホームへの侵入を止めた。武田久が執念で、大きな金字塔を打ち立てた。1点リードの最終9回。先頭打者の後藤に、右中間二塁打を許す。続く日高に右前打で無死一、三塁。一打同点、流れに飲み込まれれば、逆転の可能性もあるピンチを招いた。全幅の信頼を受けている今季を象徴するシーンをしのぎ、初タイトルをつかんだ。

 武田久

 1人、1人…、できれば三振をとりたかったけれど、それは無理だった。今年1年、自分なりの抑えというのを考えてやってきて、力任せではなくコントロールとかキレとかで勝負と思ってきた。

 理想はあるが、いつも通り、現実を直視。自分のスタイルを貫いた。初球にスクイズを試みファウルで失敗した阿部を直後の2球目、スライダーで切った。前進守備の網にかけ遊ゴロ、本塁を狙った同点の走者を止めた。まず1死を奪い、なお一、二塁で、下山を初球、同じくスライダーで中飛。たった3球で2つのアウトを重ね、山崎浩の懐をシュートでえぐり三ゴロ。「最後までストレートが修正できなかった」と方向転換し、きっちりと締めた。

 今季33セーブ目。昨オフのM・中村の移籍を機に、今季から守護神に抜てきした梨田監督は感服した。「すごいことだね。マイケル(M・中村)がずっとやっていたところ。体が大きくて、球が速くてというイメージが抑えだけど、それを変えた」。06年の「最優秀中継ぎ」に続く、2つ目の勲章を手にした。両方とも獲得したのはリーグ初の快挙になった。

 孤独で過酷な仕事を遂げる、小さなこだわりもある。シーズンオフなどには他球団の親交のある選手を会食するが、開幕すればシャットアウトする。戦うライバルとして意識、感覚が狂うことを嫌い「必要はないと思う」とのポリシーを貫いている。心を開く先はユニホームを着ている時は、チームメートだけ。「みんなが頑張ってくれたから僕にセーブがつく。野手の人も打ってくれたり。周りのみんなに感謝します」。武田久は、秘めた強い思いを打ち明けた。

 優勝マジック4となり、最短Vは3日でXデーは近い。「1年間、しんどい。やっぱり打たれたらすぐに負けにつながる仕事だから」。53試合目登板で、いまだ黒星なし。安定飛行を続ける完全無欠の守護神が、2年ぶりの歓喜へと着陸地点を決めた。【高山通史】

 [2009年10月1日10時40分

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