ソフトバンク秋山幸二監督(47)が、クライマックスシリーズ(CS)からの逆転日本一へ向けて「杉内温存」を決断した。エース左腕は現在15勝。あと1勝でリーグトップの西武涌井(16勝)と並び最多勝当確となるため、シーズン最終戦となる11日楽天戦(Kスタ宮城)で中継ぎ待機するプランが浮上していた。しかしCS第1ステージ第1戦(16日)先発なら登板間隔は中4日。本人は登板を強く希望したが、指揮官は6年ぶり日本一だけにすべてをかける決意を固めた。

 すべては逆転日本一のためだ。指揮官が苦渋の決断を下した。秋山監督は8日、全体練習のウオーミングアップを終えたエース杉内俊哉投手(28)と面談。4年ぶりの最多勝当確へあと1勝と迫った左腕は、リーグ最終戦となる11日楽天戦での登板を強く希望した。しかし、結論は違った。

 16日開幕のCS第1ステージ初戦にエースを先発させるとなると、登板間隔は中4日となる。秋山監督は「CSに関しては、ベストな状態でやってもらいたい」と説明。個人タイトルに目をつむってもらい、CSに万全の状態で臨ませる方針を示した。

 「最多勝」か「CS優先」か調整は難航した。杉内は前回6日のオリックス戦で今季8度目の2ケタ三振を奪った。だが失策がらみで失った2点を、味方打線は返すことができなかった。完投しながらも16勝目を手にすることができず5敗目を喫した。

 この試合が象徴するように、今季の杉内はまさに孤軍奮闘でマウンドを守ってきた。序盤に和田、新垣らが次々と離脱する中、15個の白星をチームにもたらした。最多勝へのチャンスは今季あと1戦。「自分の意見は言った。あとは(首脳陣に)聞いて」と左腕は、多くは語らず球場を後にした。

 身を粉にして勝利に貢献してきた杉内の希望だけに、高山投手コーチも究極の選択に頭を抱えた。それでも最後は「チームにとっても、本人にとっても1番いい選択」。中4日での登板による負担回避と、CS第1戦に万全な状態でエースを立て全力で勝利をつかみにいく姿勢を選んだ。

 この日の全体練習前、秋山監督は円陣になったナインにCSまでの心得を説いた。「(16日まで)1週間、体調管理をしっかりやってくれと(言った)。1週間でいかに心身ともにベストな状態に持っていけるか。16日からはまったなしだからね」。現役時代に7度の日本一に輝き、短期決戦の戦い方は知り尽くしている。CS、日本シリーズを勝ち抜くため、16日の初戦は万全のエースでいく。指揮官の目には、逆転日本一しか見えていない。

 [2009年10月9日11時43分

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