西武ドラフト1位の155キロ左腕、菊池雄星投手(18=花巻東)が「松坂流」と「涌井流」を取り入れてエースの背中を追う。3日、雪の降る花巻市内の同校で本格始動。球団から、レッドソックス松坂の新人時代と同じ自主トレ中のブルペン禁止が言い渡されたことを明かした。現エース涌井が実践するキャッチボール中の変化球習得にも取り組んでいるという。西武カラーの青で身を固めた大物新人は、7日の入寮を前に準備は万全のようだ。

 頭に降り積もる雪を払おうともせず、菊池は走った。その一挙手一投足にテレビカメラ7台を含む、約40人の報道陣が熱視線を注いだ。その後、高校入学から毎年必勝祈願を行ってきた花巻神社に初詣で。そこで「(自主トレで)ブルペンにはたぶん入らないと思います。(球団から)キャンプからでいいと言われているので」と明かした。金の卵を「エース」に育てる、という西武の決意が表れていた。9日に始まる新人合同自主トレで、菊池に球団から「ブルペン禁止令」が下された。

 球団からは「自主トレでは(キャッチボールで)30、40球は投げられるように」と指示されている。高校に入学してからは1月4日にチームが始動し、翌日にはブルペンに入ってきた。それと比較すれば、1カ月近く本格投球スタートが遅くなる。過去の新人の例をみても、昨年のドラフト1位中崎は渡辺監督の視察初日となった1月11日、すでにブルペン入りしている。

 このスローペース調整で思い起こされるのは、西武のエースとして活躍したレッドソックス松坂の新人時代だ。99年当時の東尾監督は「怪物フィーバー」の真っただ中にいた松坂がオーバーワークになることを気遣い、練習をセーブさせた。松坂は「余力があっても強制的に練習を止められた」と振り返っている。その松坂がブルペンに入ったのは、キャンプ3日目の2月3日。「松坂流ブルペン禁止令」は球団の菊池への期待にほかならない。

 また菊池は、球団が推奨する「涌井流キャッチボール」を練習に導入済みだ。「遊び感覚でもいいから、キャッチボールでいろんな変化球を投げておけと言われました」という。エース涌井は、キャッチボールから変化球を投げて、球種の習得に役立ててきた。菊池に涌井のような「7色の変化球」が加われば、まさに鬼に金棒だ。

 新旧エースという超一流の流儀を取り入れ、自らもその仲間入りを目指す。そして西武色に染めるのは練習法だけではない。この日はさわやかなスカイブルーのジャンパー、青い手袋とランニングシューズに身を包んだ。「青が多い?

 たまたまです」と笑ったが、入寮が待ち切れない様子だ。「入寮が1月7日で、自分の背番号は『17』。縁を感じます」と菊池。この日の花巻の最低気温はマイナス8・4度。一面、銀世界となった花巻で、怪物左腕の2010年が幕を開けた。【亀山泰宏】

 [2010年1月4日8時22分

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