開幕4番は任せろ!

 ソフトバンク松中信彦外野手(36)が2日、術後初となる打撃練習を行った。この日、主砲は約3カ月ぶりとなるトス打撃とティー打撃を敢行。いずれも軽いスイングではあったが、右ひざを手術した昨年10月以来、スイングを封印していた男に笑みが戻った。まだダッシュができない状況に変わりはないものの、リハビリメニューは順調に消化。主砲が復活までの階段を、1段ずつ着実に上っていく。

 小さな打撃音が、静まりかえった室内練習場に響いた。しかしそれは、松中とチームにとって大きな1歩だった。右ひざを手術後、約3カ月待ちこがれた“初打ち”。「ただのチェックですよ。まだ全然、打撃なんかではないです」。トス打撃とティー打撃、いずれもゆったりと軽くバットを振っただけ。ただ久しぶりに木で球をとらえた感触に、主砲の顔には明るさが戻っていた。

 雨模様の前日とは一転、この日の宮崎は晴れ渡った。キャンプ初の屋外練習。青空の下で全力アピールを行う選手らとは対照的に、背番号3は室内練習場にいた。孤独なリハビリ。チームスタッフとのキャッチボールを終えると、自身を鼓舞するようにバットをギュッと握った。「バットコントロールがうまいから、どこに投げてもいいよ」。スタッフにそう伝えると、トス打撃を開始した。

 約30球、ゆっくり丁寧にインパクトの感触を確かめた。トス打撃を終えるとティー打撃でもバットを振った。「ひざへの負担?

 キャッチボールでは大丈夫」。力を入れた打撃練習やダッシュはまだ当分できない。ただそんな中でも3月20日の開幕日本ハム戦(札幌ドーム)出場に照準を合わせる。「(打撃練習は)続けていくつもり。急に打撃はできないですから」。ひざが万全になってからの練習では、ぎりぎりで開幕に間に合ったとしても自分の打撃ができない。辛いリハビリを行いながらも、打撃の感覚だけは忘れないつもりだ。

 一筋の明るい光は見えたものの、予断を許さない状況は続くのも事実。この日はランニング練習を開始直後にやめ、一瞬周囲をヒヤっとさせた。「昨日、結構走ったから今日はペースを落としてやっただけ。第1クールはその繰り返しになると思う」と説明。昼すぎにはチームより一足早く宿舎へと戻り、プールやウエートのメニューを課した。

 この日は球場内で師匠の王会長からも激励された。「ひざのことを心配してくださった」と松中。プロ入り初のキャンプB組(2軍)スタートが決定した際には「1つずつやっていくしかない。1日1日、目標を立てて」と話した。持ち前の豪快なアーチのように、1発で局面を打開することはできない。それでも主砲は1歩ずつ、確実に3・20へ近づいていく。

 [2010年2月3日11時15分

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