若ゴイのミラクル躍動が、野村監督の胸を打った。5日のプロアマ交流戦の対社会人オール広島戦(マツダ)に、勉強のため2軍から呼ばれたドラフト4位庄司隼人内野手(18=常葉学園橘)が、予定外のプロ初の実戦出場を果たした。サプライズ出場すると8回には初打席で初安打、しかもタイムリーで初打点も挙げるド派手デビュー。最後は二ゴロをさばいて試合を終わらせた。大物の片りんをうかがわせる活躍に、野村監督も「胸が熱くなった」と強烈な印象を残した。

 8回裏無死一、二塁。追加点の絶好機でルーキー庄司に“プロ初打席”が巡ってきた。初球のスライダーを見逃し「今日はボールが見えている」と判断。続く2球は打ち損じたが、ストレート狙いだった4球目、読みと違ったスライダーにも瞬時に反応、的確にミートして中前へはじき返した。見事なタイムリーヒット。この一打からさらに3点を加え、試合は9ー0の完勝だ。9回には二塁ゴロをさばいて最後の打者を打ち取るなど、庄司はいきなり主役級の活躍を見せた。

 「緊張しました。ヤバかったです」と苦笑いしたが、しびれるのは当然の状況だった。2軍戦ではなく、アマチュアの社会人相手とはいえ、野村監督が指揮を執った1軍の試合だ。庄司自身、プロ初の実戦で、しかも二塁を守るのは初経験だった。

 そもそも、出場機会がああるかさえ分からなかった。この日は教育リーグのオリックス戦(由宇)があり、庄司は同試合に参加するところだった。勉強のためとドラフト2位の堂林とともに呼び寄せたのは1軍首脳陣。野村監督もベンチ入りさせたものの「試合に出すかどうかは決めていなかった」といい、試合展開次第では出番なしに終わるところだった。

 だが、6回裏の攻撃で丸が負傷して突然、出番が回ってくる。7回表の守備からグラウンドに出た。リードしている展開の後攻で、7、8回が3者凡退なら打席は回ってこなかった。7回に打者5人で1点を取り、8回裏に打席に立つチャンスが巡ってきた。神様の粋な計らいで舞台に立ち、最高の結果を出した。

 想像以上の躍動に、指揮官も感激していた。「初めて打席に入って、初めて見る変化球に反応できるところにセンスの良さを感じる。見ていて胸が熱くなった。自信になっただろうし、我々にいい印象を残してくれた」と絶賛した。

 もちろん、これで即1軍ではない。将来の広島を背負う人材として大きく育てる方針で、じっくりと2軍で実戦経験を積むことになる。6日からは2軍の教育リーグに参加するが「試合にも出してもらい、レベルの高さを体で感じた。これを忘れずに、1日でも早く1軍に上がりたい」とミラクル18歳は目をぎらつかせていた。【高垣

 誠】

 [2010年3月6日11時58分

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